2014 Fiscal Year Annual Research Report
X線ホログラフィ映像法を用いた媒質内屈折率分布の3次元測定
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14F04360
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
日比野 謙一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 工学計測標準研究部門, 主任研究員 (60357845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NISKANEN Ilpo 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 工学計測標準研究部門, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | Xray hologram / Gabor hologram / Phase contrast image / Phase measurement / Interference |
Outline of Annual Research Achievements |
生体タンパク質や関連分子の分布状況を、X線の散乱光から逆算する計算機ホログラム法を用いて解析することを将来目標として、本年度は、X線ホログラムから再生像を低雑音で取得する新手法を実証した。高エネルギー加速器研究機構の放射光施設を利用して既に撮影・記録したマイクロビーズ試料のX線ホログラムを用いて、再生像の計算実験を行った。マイクロビーズは8ミクロン直径のポリスチレン球で、単色X線の発散球面波をを照射して、7m後背にある2次元半導体検出器で干渉縞を観察したものである。試料からの回折光と散乱されずに透過するゼロ次光が単純に干渉縞を作るインライン型(GABOR型)ホログラムである。このタイプのホログラムは、1947年提案後、ノーベル賞も受賞したが、信号となる1次回折光の他に、-1次の回折光が同位置に重なりノイズとなるため、今まで積極的な利用がなされなかった。今回、再生時に記録時の発散光と異なる平行光照明を用いて幾何学的なパラメータを整えると-1次光の影響を最小化できること、また、屈折率差の小さい生体観察で強力な手法の一つである位相コントラスト像を再生できることを発見し、その理論の妥当性を検討した。今回はホログラムに(仮想的に)可視波長のHeNeレーザー光を照射した場合の再生像を計算した。 計算では、再生像の現れる奥行き位置の特定のために、ホログラム撮影時の点光源と物体間の正確な距離が必要になるが、放射光利用時に計測が難しかったため、ある範囲内で距離を順次仮定して計算を行った。その結果、ホログラムの後背、174.500 mの位置に鮮鋭な試料の位相コントラスト像を得ることに成功した。結果を、次年度2015年9月にフィンランドで開催予定の学術シンポジウムに投稿した。この他、HeNeレーザー光を用いた散乱光照射ホログラムの記録光学系を試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた第一次案の理論実証の実験が成功を収め、計画通り順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定ののX線ホログラムからの低雑音位相コントラスト像再生に成功した。次のステップとして、この系のさらなる低ノイズ化を図るために、この光学系を可視波長のレーザー光源で実際に試作し、評価することとした。現状で8ミクロンのビーズを用いていたのを、さらに微細な1ミクロン径以下のナノ粒子を用いる実験に発展させる。ナノ粒子試料は、分担研究者の出身母体であるフィンランドOulu大学の研究グループの協力で作成する。粒子からの散乱光の発生状況は、試料の屈折率に依存する。ナノ粒子の屈折率は、通常サイズの屈折率からシフトすることが予想されるが、未だ報告は少なく、実際に測定できれば大きな学術的意味を持つ。このため、今回、屈折率調整油に懸濁したナノ粒子の光散乱光強度を精密に図り、その屈折率を測定することを、次年度の方針とする。また、植物組織で反射・散乱された光の偏光変化ももう一つの課題として調べる。
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