2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体力学的適合性を有する再生医療用関節層状組織の開発
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14F04362
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ISLAM MD 九州大学, 応用力学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 再生医療 / 骨組織工学 / 軟骨 / 海綿骨 / リン酸カルシウム / コラーゲン / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症、大腿骨頭壊死症、あるいは関節リューマチ等の疾病が生じ進行した場合、関節組織は大幅に損傷を受ける。特に関節軟骨は再生能力に劣るため、最終的には人工関節置換術のみが有効な治療法となる。そのような状況の下、近年再生医療による関節組織の再生が注目されているが、実際には軟骨の一部分や骨組織単体の再生治療が行われているのみであり、軟骨と海綿骨の層状構造を形成する関節組織全体を再生する試みは少ない。本研究では、軟骨と骨の人工組織をそれぞれ別々に組織工学的手法により構築した後で層状に重ね合わせることで、関節組織様複合組織を構築することを目的とする。 平成27年度は、軟骨と骨のそれぞれの人工再生組織の構築法の確立を目指して研究を推進した。軟骨に対しては、開発したコラーゲンゲルとコラーゲンスポンジの複合体を足場材料とし、間葉系幹細胞を細胞源として培養実験を行った。hMSCsは軟骨細胞に分化する際は増殖能が失われるために、細胞増殖と軟骨分化の両方を実現する組み合わせ培養法を新たに提案し、その有効性を示すことに成功した。新規培養法により細胞数と圧縮弾性率は確実に上昇することを確認した。 一方、骨再生に対しては、これまで本研究代表者が確立してきたハイドロキシアパタイト焼成多孔体にポリマー相を2種類の方法で導入する骨再生用足場材料の作製方法をさらに発展させることを試みた。具体的には、コラーゲンのコーティング層あるいはスポンジ層にHA微粒子を分散させることで、骨再生能を劇的に向上させる可能性がある材料の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の平成27年度の目的は、これまで研究を進めてきた軟骨と海綿骨それぞれの人工組織構築法を精査し、より高機能で自然な生体組織に近い人工組織を作製する技術を確立することであった。最終的には、これら単独に作製した人工組織を重ね合わせて層状複合構造とし、関節様多層組織を人工的に構築することを最終目標としている。 軟骨に対しては、開発したコラーゲンゲルとコラーゲンスポンジの複合体を足場材料とし、間葉系幹細胞を細胞源として培養実験を行った。hMSCsは軟骨細胞に分化する際は増殖能が失われるために、細胞増殖と軟骨分化の両方を実現する組み合わせ培養法を新たに提案し、その有効性を示すことに成功した。新規培養法により細胞数と圧縮弾性率は確実に上昇することを確認した。また、骨再生に対しては、これまで本研究代表者が確立してきたハイドロキシアパタイト焼成多孔体にポリマー相を2種類の方法で導入する骨再生用足場材料の作製方法をさらに発展させることを試みた。具体的には、コラーゲンのコーティング層あるいはスポンジ層にHA微粒子を分散させることで、骨再生能を劇的に向上させる可能性がある材料の作製に成功した。 このように軟骨と海綿骨の両方に対して、確実に人工組織作製法の改良と機能改善が達成されており、研究の進捗状況は順調に進展していると断言できる。さらに、最終年度に実施予定の軟骨と海綿骨の層状化についても一部基礎的研究を進めており、すでに2層構造の人工組織の構築に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度(最終年度)は、これまで進めてきた軟骨と海綿骨の人工組織構築法をさらに確立するとともに、これらを重ね合わせた複層人工組織の構築法の確立を目指す。具体的な研究計画は以下の通りである。 (1)人工軟骨組織については、これまでに確立した2種類の組み合わせ培養法について、どちらがより適切かを軟骨分化、細胞増殖能、力学特性の点から多角的に明らかにしていく。また、より生体組織に近づけるために、特に足場材料の厚さを生体組織と同等に薄くし、また播種細胞の高密度化を実現することで、生体軟骨に近い組織形成の構築、さらには力学特性の向上を試みる。作製した人工組織に対して細胞生物学的、バイオメカニクス的検討を進めていく。 (2)人工骨組織については、開発に成功した2種類の新規足場材料(ナノHA微粒子分散型HA/コラーゲン多孔質複合体)について、間葉系幹細胞を用いた培養実験を行い、生体適合性、細胞増殖性、骨細胞分化能、細胞外基質形成能、力学特性の各項目について性能評価を進めていく。 (3)(1)および(2)で作製した人工軟骨および人工海綿骨組織を層状に積層することで、生体関節を模擬した人工組織構造を作製し、最終目標である人工関節組織の構築法の基礎を確立する。
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Research Products
(5 results)