2014 Fiscal Year Annual Research Report
ピロプラズマ症に対する新規コンビネーション治療法の開発
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14F04401
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
横山 直明 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (80301802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TSERENDORJ Munkhjargal 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ピロプラズマ / 治療法 / コンビネーション / バベシア / タイレリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、副作用が少なく効果的な薬剤と免疫賦活剤を併用し、治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規の制圧戦略の構築を目的としている。そこで、最初に、培養原虫を用いて新たなピロプラズマに対する薬剤候補とアリシンの併用効果について検討を行なった。既にバベシアに対する増殖抑制効果が報告されているヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のアピシジンと免疫賦活剤のアリシンを併用して培養原虫に添加した結果、単独で添加した場合より高い増殖抑制効果が得られた。次に、より多数の副作用が少なく効果的な薬剤の探索を目的として、ヒートショック蛋白質90阻害剤である17-DMAG、植物アルカロイドであるセファランチンの培養バベシア原虫に対する増殖抑制効果についてSYBR green を用いた薬剤評価系を用いて検討を行なった。その結果、17-DMAGのB. bovis, B. bigemina, B. caballi 及びT. equiに対するIC50 は、それぞれ125,69,104,413 nMであった。また、セファランチンのB. bovis, B. bigemina, B. caballi 及びT. equiに対するIC50 は、それぞれ271,250,281,204 nMであった。これらの値は、現在抗バベシア剤として使用されているジミナゼンと同等の増殖抑制濃度である。そこで、マウス感染実験モデルを用いて17-DMAGの治療効果の検討を行なった。B. microti をマウスに感染後3日より4日間、17-DMAGを30mg/kg体重の用量を感染マウスに投与した結果、非投与群に比較して低い原虫寄生率が認められた。また、貧血の度合いも極めて軽微であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づき、培養原虫(Babesia bovis, B. bigemina, B. caballi, Theileria equi)を用い、新たなピロプラズマに対する薬剤候補であるアピシジンと17-DMAGの増殖抑制効果を検討した結果、現在使用されている抗バベシア剤であるジミナゼンと同等の増殖抑制効果を示す事が明らかとなった。特に、B. microtiを用いたマウス感染モデルを用いた治療実験において、17-DMAGは現在市販されているジミナゼン製剤より優れた治療効果を示した。また、既にバベシアに対する増殖抑制効果が報告されているアピシジンと免疫賦活剤のアリシンの併用により、4種類の培養原虫に対して、単独添加よりも高い増殖抑制効果が認められた。この結果は、副作用が少なく効果的な薬剤と免疫賦活剤を併用し、治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規の制圧戦略の構築を更に推進するための基礎的なデータを更に補強し、今後アリシンと他の薬剤との併用を更に検討する価値のある事を示唆している。よって、概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規のより効果的な制圧戦略の構築を推進するために、下記の項目について検討を進める。 1.薬剤候補とアリシンの併用効果の検討:現在市販されているジミナゼン製剤より優れた増殖抑制効果を示した17-DMAGとアリシンとの併用効果について、B. microtiを用いたマウス感染モデルを用いた治療実験を用いて検討する。併用する17-DMAGとアリシンの濃度、投与経路(経口、皮下、腹腔、筋肉)、投与期間について検討する。また、17-DMAGと茶カテキンである(-)-Epigallocatechin-3-gallate(EGCG)との併用効果についても検討を進める。 2.感染マウスの治療効果の判定方法の検討:現在使用されている抗バベシア剤の大きな問題は、原虫を完全に排除できず、再発がしばしば認められる事である。そこで、本研究では、感染マウスの流血中の原虫寄生率ばかりでなく、心臓、腎臓、脾臓等の主要臓器中の原虫の有無について、PCRや臓器細胞移入試験を追加して、より詳細な治療効果の判定を行なう。 3.バベシア原虫のヒートショック蛋白質90の分子生物学的解析:17-DMAGの標的であるヒートショック蛋白質90(HSP-90)をコードする遺伝子、原虫の局在、機能について検討する。
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[Journal Article] Evaluation of the inhibitory effects of miltefosine on the growth of Babesia and Theileria parasites.2014
Author(s)
194.AbouLaila, M., Batadoj, D., Salama, A., Munkhjargal, T., Ichikawa-Seki, M., Terkawi, M. A., Yokoyama, N., and Igarashi, I.
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Journal Title
Vet. Parasitol.
Volume: 204
Pages: 104-110
DOI
Peer Reviewed