2015 Fiscal Year Annual Research Report
スパインにおける局所翻訳の網羅的解析による自閉症の病態解明
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14F04410
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 元雅 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (40321781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN YI-KAI 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 翻訳 / リボソーム / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞において、翻訳は細胞体の核近傍の小胞体のみで行われているわけではなく、神経突起の末端などでも翻訳は行われ、局所翻訳と呼ばれている。神経細胞の樹状突起における、神経活動に依存した局所翻訳の異常は、神経可塑性の異常に繋がり、ひいては精神障害をもたらすと示唆されている。しかしその詳細にはこれまで不明な点が多く、これまで十分に理解されていない。本研究では、樹状突起における局所翻訳の網羅的解析を行う手法を確立させ、それを精神・神経変性疾患研究へ応用する。本年度は、哺乳動物細胞を用いた上記の網羅的なRNA翻訳解析技術の確立を目指し、マウス個体の脳およびマウス脳由来初代培養の神経細胞、培養哺乳動物細胞を用いて、翻訳最中のリボソーム内に存在するRNAを単離する手法を確立させた。さらには、次世代シーケンサーで読んだ塩基配列の定量的な比較解析を効率的に行い、その結果を統計解析を行うため、様々なバイオインフォマティックス手法のプラットフォームを確立させた。また、脳内の神経細胞には多くの種類があるが、神経細胞特異的なmRNA翻訳分子機構の解明を目指し、マウス個体の脳を用いて、ある特異的な神経細胞のみから、リボソームに結合したRNAを高精度に単離し、配列解析を行うための手法も今年度に確立させた。これらの試料を次世代シーケンサーで網羅的に解析したところ、各試料において、特異的な翻訳パターンの存在が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mRNA翻訳の網羅的解析手法を確立し、哺乳動物細胞や神経細胞を用いてデータ取得を行い、さらに配列データの解析のためのバイオインフォマティクス手法もほぼ確立できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで確立してきた翻訳解析手法を用いて、引き続き、神経細胞の細胞体と樹状突起において、神経刺激の前後で翻訳されている最中のmRNAとtRNAを同時に、かつゲノムワイドに調べることで、神経活動に依存したmRNA翻訳の全容解明を目指す。また、本年度に引き続き、マウスに対して神経刺激を誘発させる行動解析を行い、その直後に海馬を単離し、そこから特異的な神経細胞のみからリボソームを高度に精製して配列解析を行う。それによって、マウス個体を用いて、神経活動の実体をmRNAとtRNAの翻訳解析によって明らかにする。今後は特に、各tRNAコドンの使用頻度(コドン選択)、tRNA修飾や翻訳効率が神経刺激前後でどのように変わるか検討を行う。さらには、自閉症モデルマウスを用いて同様の翻訳解析を行い、分子レベルでの発達障害機構の解明に繋げていく。一方で今年度も引き続き、翻訳解析手法のさらなる効率化、高感度化、定量化を目指して、ライブラリーの作成法にも更なる改良を適宜、加えていく予定である。
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