2015 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞由来の造血幹細胞を利用した再生不良性貧血自己抗原の同定
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14F04419
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ESPINOZA CALDERON JORGE LUIS 金沢大学, 医学系, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 再生不良性貧血 / 6pLOH / iPS細胞 / 細胞傷害性T細胞 / 造血前駆細胞 / 自己抗原 / HLA-B*40:02 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生不良性貧血(再不貧)患者の体内において、造血前駆細胞の傷害に関与している細胞傷害性T細胞(CTL)を単離するため、第6染色体短腕のHLA遺伝子を含む領域のuniparental disomy の結果、第6染色体短腕のloss of heterozygosity (6pLOH)によりHLAクラスI抗原の欠失を起こした血球を持つ再不貧患者7症例の単球(5例)またはBリンパ芽球細胞株(2例)からiPS細胞樹立を試みた。その結果、計6例から2-9個のiPS細胞クローンが樹立された。このうちシクロスポリン依存性の1例(KANA1)では、6pLOH(+)と6pLOH(-)の両者のクローンが樹立された。両者の細胞を種々の造血因子の存在下で3週間培養することにより、約50%のCD34陽性細胞を含むHLA-A24(+)およびHLA-A24(-)の造血前駆細胞集団が誘導された。この患者から同意を得てCD8+T細胞を単離し、X線照射したHLA-A24(+)細胞と共に2週間培養した。得られた培養T細胞はHLA-A24(+)CD34陽性細胞を傷害したが、HLA-A24(-)CD34陽性細胞は傷害しなかった。このCTL株から7個のT細胞クローンを単離したところ、そのうち2個は親細胞株と同様に、HLA-A24(+)CD34陽性細胞のみを傷害した。このCTLクローン2種類を、1チューブあたり200万個を含むチューブを10本凍結保存した。現在、CTLクローンが細胞傷害性を示したCD34陽性細胞からcDNAライブラリーを作製し、HLA-B*40:02をトランスフェクトしたCOS細胞への導入を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、6pLOH(+)と6pLOH(-)の両者のiPS細胞クローンから、HLA-A24(+)およびHLA-A24(-)の形質を持つ造血前駆細胞が誘導された。また、HLA-A24(+)造血前駆細胞で同じ患者のCD8陽性T細胞を刺激することにより、HLA-A24(+)造血前駆細胞を強く障害し、HLA-A24(-)の造血前駆細胞は傷害しないCTL株を樹立することに成功した。また、このCTL株から、同じ特異性を示すCTLクローンが2クローン同定された。当初はこのクローンを10e8程度まで増やしたうえでaliquotを凍結保存する予定であったが、T細胞クローンの増殖が不良であったため、それぞれのクローンから得られた総細胞数は2x10e7程度であった。このCTL数では、十分な数のcDNAライブラリートランスフェクタントをスクリーニングできない可能性があるため、現在、同じ患者のCD8陽性T細胞を再度HLA-A24(+)造血前駆細胞で刺激し、HLA-A24(+)造血前駆細胞を選択的に傷害するCTLクローンの樹立を試みている。 一方、最近の我々の研究により、このKANA1では、6pLOHとは別に、HLA-B*40:02遺伝子のミスセンス変異により、B61のみを欠失する白血球[B61(-)血球]が存在することが明らかになった。さらに、樹立していた野生型[HA-A24(+)]と考えていたiPSクローンの一つが、B61単独欠失クローンであることが判明した。このため、cDNAライブラリートランスフェクタントのスクリーニングには、これまで樹立したHLA-A24(+)造血前駆細胞特異的CTLクローンの中で、B61(-)造血前駆細胞は傷害しないCTLクローンを用いる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたHLA-A24(+)造血前駆細胞特異的CTLクローンの中で、B61(-)造血前駆細胞は傷害しないCTLクローンをeffector、cDNAライブラリーをトランスフェクトしたHLA-B*40:02導入COS細胞をtargetとして共培養を行い、γインターフェロン産生を誘導するCOS細胞トランスフェクタントを同定する。このCOS細胞をトランスフェクトしたcDNAの塩基配列から、CTLの標的抗原を決定する。 ただし、このアプローチでは十分なCTLクローンが得られない可能性があるため、別のアプローチとして、KANA1の発症時に採取した骨髄中で抗原特異的に増殖しているT細胞クローンのT細胞レセプター(TCR)α鎖・β鎖を以下の手順で同定することにより、in vivoで増殖しているT細胞の標的抗原を同定する。①TCRスペクトラタイピングによる抗原特異的T細胞のTCRVβファミリーとCDR3塩基配列の同定、②同定したVβファミリーT細胞のsingle cell sorting、③特定のCDR3遠位配列を持つT細胞の同定、④そのT細胞TCRα鎖・β鎖cDNAのクローニング、⑤患者自身のT細胞へのTCRα鎖・β鎖cDNAの導入、⑥このT細胞トランスフェクタントをeffectorとするcDNAライブラリートランスフェクタントのスクリーニング。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Induction of HLA-B*40:02-restricted T cells possessing cytotoxic and suppressive functions against haematopoietic progenitor cells from a patient with severe aplastic anaemia.2016
Author(s)
Inaguma Y, Akatsuka Y, Hosokawa K, Maruyama H, Okamoto A, Katagiri T, Shiraishi K, Murayama Y, Tsuzuki-Iba S, Mizutani Y, Nishii C, Yamamoto N, Demachi-Okamura A, Kuzushima K, Ogawa S, Emi N, Nakao S.
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Journal Title
Br J Haematol.
Volume: 172
Pages: 131-4
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Somatic Mutations and Clonal Hematopoiesis in Aplastic Anemia.2015
Author(s)
Yoshizato T, Dumitriu B, Hosokawa K, Makishima H, Yoshida K, Townsley D, Sato-Otsubo A, Sato Y, Liu D, Suzuki H, Wu CO, Shiraishi Y, Clemente MJ, Kataoka K, Shiozawa Y, Okuno Y, Chiba K, Tanaka H, Nagata Y, Katagiri T, Kon A, Sanada M, Scheinberg P, Miyano S, Maciejewski JP, Nakao S, Young NS, Ogawa S.
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Journal Title
N Engl J Med.
Volume: 373
Pages: 35-47
DOI
Peer Reviewed
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