2014 Fiscal Year Annual Research Report
核融合プラズマにおける共鳴摂動磁場の浸み込み及び不安定モードの電磁流体力学的研究
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14F04728
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
市口 勝治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (90211739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NICOLAS Timothee 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 磁場閉じ込め核融合 / 電磁流体力学 / 数値シミュレーション / ヘリオトロン / 交換型モード / 反磁性ドリフト / 線型固有値 / 不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合エネルギー発電の実現に向けた研究において、ヘリオトロン磁場閉じ込め方式では、圧力駆動型モードが、電磁流体力学的には最も危険な不安定性となる。LHDの実験においては、交換型モードに対して何らかの安定化メカニズムが働いていることが示唆されており、モードが電子反磁性方向に回転していることも得られている。そこで、本研究では、反磁性効果による影響を数値的に調べた。まず、イオン反磁性効果を導入して三次元数値計算を行った。この場合、実験に対応すると考えられる電気抵抗、粘性、熱伝導の散逸効果も導入した。その結果、ベータ値が高く、理想モードに対して不安定な場合には、理論からの予想通り、モードはイオン反磁性効果に回転し、反磁性効果が大きいほど、成長率が小さくなる。これに対し、ベータ値が低く、理想モードが安定で抵抗性モードのみが不安定な場合には、モードは逆の電子反磁性方向に回転する結果が得られた。また、反磁性効果によって成長率が大きくなる領域が存在することを見出した。これは、理論的解析からは予想できない。そこで、円柱配位での簡約化方程式を利用して、固有値解析を行った。まず、散逸の効果を調べるために、反磁性効果の無い解析を行った。理想不安定な状態からベータ値を小さくしていくと、不安定な第1成長率は小さくなり、ある値以下では第2固有値と縮退して小さくなっていく。一方、実周波数成分は、成長率の縮退と同時に2つに分岐し、片方は大きくなり、もう片方は小さくなる。この状況にイオン反磁性効果を加えると、ベータ値が小さくなるにつれて、第1成長率が小さくなる状況は同様であるが、縮退は生じず、小さなベータ値では安定化効果は反磁性効果が無い場合に比べて弱い。さらに、第1実周波数は、ベータ値の減少とともに減少し、符号が反転して、モードの回転がイオン反磁性方向から電子反磁性方向へ変化することが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、ヘリオトロンプラズマでの電磁流体力学的安定性の理論的解明を目指している。特に、核融合科学研究所での大型ヘリカル装置(LHD)における実験結果を説明し、それによる将来の原型炉の設計に寄与することが課題となる。ヘリオトロンプラズマでは、プラズマ中に大電流を流さなくても閉じ込め磁場を形成することができるため、電流駆動型モードは不安定にならず、トカマク装置では避けられないディスラプションは原理的に生じないという非常に大きな利点を持っている。一方、圧力駆動型モード、特に交換型モードが最も危険な不安定性であり、LHD実験においても、交換型モードによる崩壊現象が観測されている。従って、交換型モードに対する安定性限界を確定することがきわめて重要である。ところが、LHD実験においては、理想モードに対して不安定であると理論的に予測されている磁場配位において最高β値が達成されており、理想モードによる予測は十分でない。また、モードは電子反磁性方向に回転していることも観測されており、この回転に関する解明も必要である。そこで、本研究課題では、反磁性効果を含む安定性解析を行い、LHD実験結果を解明しようとしている。平成26年度は、まず、熱伝導の効果が交換型モードの線形成長にどのように影響を与えるかについて解析を行った。そして、固有値の分岐と融合が生じることを始めて明らかにした。さらに、イオン反磁性効果を含む数値解析を行い、安定性とモードの回転方向に対する新たな知見を得、その特性を理解することに成功した。この観点から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、主としてイオン反磁性効果を含む解析を行ったが、実際のプラズマには電子反磁性効果も存在する。そこで平成27年度においては、電子反磁性効果も含めた解析を行い、より現実に即した解析を行う。電気抵抗、粘性、熱伝導の散逸効果に対して広範なパラメタサーベイを行い、イオン及び電子反磁性効果の安定化寄与が働く領域を確定し、実験結果と比較する。また、モードの回転方向についても、定量的な解析を行い、実験結果を説明する。解析手法としては、三次元数値シミュレーションと簡約化方程式による固有値解析を用い、シミュレーションによる線形的振舞いを固有値解析によって解明する。さらに、三次元数値シミュレーションを非線型飽和領域まで拡張し、定常的な回転や崩壊現象の再現を目指す。核融合原型炉においては、大規模な崩壊現象を避ける必要がある。また、小規模な揺動は、第2安定化によって抑制される可能性もある。従って、原型炉における安定限界は非線型崩壊現象の有無によって判断すべきである。しかし、非線型シミュレーションは一般に大きな計算コストが必要となる。そこで、非線型崩壊現象と線型解析との関連を精査することによって、線形解析で崩壊現象による安定限界を予測できるようにすることが必要である。その知見を元に、ヘリオトロン型原型炉における交換型モードに対するの安定性限界指標の確立を目指す。
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Research Products
(8 results)