2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04787
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山中 伸弥 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10295694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Johansson Erik Martin 京都大学, iPS細胞研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Glioma / IDH1 / Differentiation / iPSC / DNA methylation / Epigenomics |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、単一細胞レベルでのエピゲノム解析を行うことで、細胞運命を理解し、異常な細胞分化に起因する癌をはじめとする疾患の理解を行うことである。本研究では、シングルセルエピゲノム解析によって、細胞の分化過程における遺伝子発現制御のダイナミクスを明らかにする。特に細胞分化過程における遺伝子発現のヘテロ性を考慮した解析を行うことによって、シングルセルレベルでの分化の度合いの定義を行い、その分化の度合いに従った遺伝子発現制御を明らかにする。これらのシングルセル技術を脳腫瘍発生モデルに応用することで、脳腫瘍の発生モデルを構築すると共に創薬スクリーニングの基盤を提供する。具体的には、二次性神経膠腫で特異的に見られるIDH1変異体をiPS細胞に導入し、この変異体をアストロサイトなどの神経細胞へ分化させる際に一過的に癌発現させる。その変異体がひきおこす正常分化の異常を捉えることを試みる。さらには複数の変異遺伝子を同時、または連続的に発現させることで多段階発がんモデルを作製する。これらのモデルを用いて、正常な神経分化から逸脱する細胞集団をシングルセル遺伝子発現解析で同定する。さらにはこの分化系を用いて癌様細胞が発生する培養条件で、それらの細胞集団を標的とする化合物の同定を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度はIDH1の変異体をレトロウィルスシステムで導入した脳腫瘍モデルiPS細胞からアストロサイトの分化を行った。まず、ドキシサイクリンで発現誘導可能なIDH1の変異体をヒトiPS細胞に導入した細胞を入手した。この細胞を用いて、市販で入手可能な神経細胞誘導培地の比較を実施した。神経幹細胞のマーカーであるNestin及びPax6の染色によって、StemDiff Neural System(Stem Cell Technology社)を用いることで効率のよい神経幹細胞の作製が可能であった。こうして作製した神経幹細胞に対し、さらにアストロサイトへの分化誘導効率をSTEMdiff Astrocyte Differentiation Kit (Stem Cell Technology)とGibco Astrocyte Differentiation Medium (Life Technologies)を用いて検討した。アストロサイト特異的マーカーであるGFAPの染色の結果、STEMdiff Astrocyte Differentiation Kitの方が高い分化誘導を示した。こうして、決定した分化誘導条件下で、IDH1変異体を一過的に発現させ、細胞増殖や細胞形態を観察したが、目立った変化は観察されなかった。同時に、CRISPR/Cas9システムを用いてヒトiPS細胞にIDH1の変異を導入した細胞株の作製に着手した。現在までにコンストラクトが完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はこの分化誘導系を用いて、IDH1変異体が発現する細胞の表現系を観察する。特に通常の神経細胞への分化誘導条件ではなく、より生体内に近い、また発がん過程で起きていると考えられるストレス条件下で、IDH1変異体の発現の影響を観察する。また、CRISPR/Cas9システムを用いて他のドライバー変異を導入し、多段階発がんのモデルを作製する。さらに、これらの変異が正常な細胞分化に与える影響をオープンクロチンアッセイやシングルセル遺伝子発現解析などの種々のエピゲノム解析にて明らかにする。具体的には、各種変異体を発現させてから時系列を追ってRNAやDNAを回収し、次世代シークエンサーを用いて、各時系列における遺伝子発現及びDNAメチル化を観察する。遺伝子発現についてはバルクの発現解析と共にシングルセルでも実施し、分化度に並び替えることで、疑似的な時系列を描写する。そして、癌変異体の発現によって、この分化軸から逸脱する集団が特異的にもつ転写ネットワークを捉える。これらの一連の実験によって、正常分化と癌発生の分岐点を同定し、この分岐点に作用する化合物スクリーニング系に展開する。
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