2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14F04809
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武内 和彦 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 教授 (90112474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BEROYA-EITNER Mary Antonette 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 洪水被害モデル / 脆弱性 / 対応力 / グレーソリューション / グリーンソリューション / 生態系サービス / 水害脆弱性指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、水害脆弱性を低減する傾向がみられる要素に焦点を当てて、アジア諸国での現在及び将来の洪水被害の増加について検討した。文献調査からの知見を出発点として、ベトナムと日本において現地調査を実施した。 ベトナム、メコン川デルタの調査では、水害脆弱性評価に主眼を置き、ベトナム統計局(GSO)及びWater-related Information System for the Sustainable Development of the Mekong Delta in Vietnam(WISDOM) 情報システムのデータや文献を基に、水害脆弱性指標を開発した。水害脆弱性評価には、演繹的アプローチを用い、脆弱性の概念枠の構築、洪水の要因解析、そしてメコンデルタのデータを利用して水害脆弱性評価に必要な要因とプロセスのための最適な指票を選定した。 また、日本では、実施可能な水害脆弱性軽減策の評価を軸に据え、様々な解決策の中で、特にグリーンソリューション(ソフト、生態系ベース)に重きを置き、谷戸流域での調査を実施した。世田谷区役所、国士舘大学関係者、同地域で活動するNPOの代表とのインタビューを実施したほか、予備的な実地調査を行い状況把握に努めた。また、同地域における過去の研究資料を収集した。 世田谷区は積極的に雨水浸透施設の設置に取り組んでいるが、住民の意識の欠如、設置コスト、洪水問題への無理解といった問題が明らかになった。それらの問題に対して、同調査結果を出発点として、将来的に洪水被害モデルにグリーンソリューションを統合するためにはどのようなアプローチが望ましいか議論、検討を行った。従来の工学的アプローチに生態系ベースのソリューションを組み合わせることに高い関心を示す、社団法人雨水貯留浸透技術協会(ARSIT)と、今後も意見交換を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ベトナムにおける研究調査からは、予想以上の成果を上げることができた。これは、データの利用可能性という、途上国での典型的な問題を予測して対処していたためであるが、実際はメコン川のデルタ地域は研究が非常に進んでおり、文献やデータは数多く存在していることが分かった。問題はどちらかというと、これらの膨大なデータを統合することにあると言える。日本における調査は非常に良いスタートを切っており、当初より本研究に関する研究者や専門家の人的ネットワークが確立されている。唯一、研究の進展を妨げる可能性があるものとして、日本語の膨大な文書の翻訳が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
一般的な洪水被害モデルの開発を試みていることから、東南アジアの他の地域での調査も実施する必要がある。また、日本のように、従来より洪水問題に対するグリーンソリューションを取り入れているオランダやドイツも調査対象となり得る。これらの国々の経験や教訓は、谷戸流域のケースに汎用可能であると考える。
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Research Products
(1 results)