2014 Fiscal Year Annual Research Report
よりよい適応管理を目的とする塩水浸入による損失、損害についての知識格差の特定
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14F04813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武内 和彦 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 教授 (90112474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KUMAR Pankaj 東京大学, サステイナビリティ学連携研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Killinochi / ArcGIS / 水資源管理 / 気候変動 / 持続可能な開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
スリランカ北部のキリノッチは、内戦により荒廃した乾燥地帯であるが、ここ数年で人の再定住と都市化が進み、再び活性化されつつある。これに伴い、水需要が急激に高まり、同地域の地下水資源の持続可能な利用が求められている。研究対象地域を含むスリランカの各地では貯水池が地域全体に広がり、農業用水と生活用水両方に水を供給するという伝統的な方式の灌漑がこれまで行われてきた。この方式は、気候変動や異常気象に対しては非常にレジリエントな水管理システムだが、需要を満たすには十分ではない。気候変動に対するレジリエンスの向上には、現代の灌漑システムに伝統的な灌漑システムのレジリエンス機能を組み込むことが有効であると考えられる。 対策としては、貯水池にある余剰水が利用できる雨季にそれらを地下水涵養させることにより、乾季や水不足の際には表面水と地下水両方の水資源を活用することが考えられる。本研究では、研究対象地域の潜在的な地下水量及び涵養量の計測、塩水化に関する様々な数値シミュレーションのツールを使用し、地下水源の定性的及び定量的な評価を行って、異常気象及び今後の気候変動の影響のための水資源管理ツールを開発することを目指す。平成26年度実施した現地調査では、リモートセンシングと地理情報システム(GIS)を統合的に利用し、同地域の地下水の潜在帯状(GWPZ)マップを作成。地下水採取の有望地として4つの異なる区域が画定された。帯水層パラメータ、土壌データといった空間的な気象強制力データ及び地理空間データ の収集し、研究対象地の地下水潜在性のゾーニングをArcGISにて作成した。 研究成果の一部は3つの異なる学会にて発表を行い、平成27年度にも発表を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初の予定通り、本研究に関連した文献調査を行った。入手可能なデータは限られていたが、様々な地域における涵養量の計算などを行った。これらの文献研究は学術論文や会議発表論文の執筆に役立つものであり、すでに3つの学会において研究成果を発表している。次のステップとして、実際の地下水問題と整合する研究成果を得るためのよりよいモデルを較正するために、スリランカの農業局および農業サービス局からのデータセット収集を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次のステップとして、ArcGIS、WEAP、MODFLOWを統合したモデリングシステムを使用し、スリランカ北部のキリノッチ地区における潜在的涵養量、内陸に向かう塩プルームの移動量の定量分析を行う。 文献調査を継続して行い、Arc Hydro及びMODFLOWによる領域モデルの設定を試みる。また、同モデルを実行するために、パラメータの最適化及び較正を行う。 検証後のモデル出力に基づき、異常気象及び将来の気候変動の影響のための水資源管理ツールを開発する。 本研究によって期待される成果は、科学・研究コミュニティが水の潜在的な利用可能性についての深い洞察を得る手がかりとなり、持続可能な水資源管理に資するものとなる。
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