Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 重樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (20113425)
榊 茂好 京都大学, 工学研究科, 教授 (20094013)
波田 雅彦 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20228480)
江原 正博 京都大学, 工学研究科, 助教授 (80260149)
長谷川 淳也 京都大学, 工学研究科, 助手 (30322168)
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Research Abstract |
1.量子化学基礎理論の精密化と再構築:Scaledシュレーディンガー方程式を提出し,正確な解を安定に求める一般的な方法を開発した.この方程式は,シュレーディンガー方程式と等価であり,原子・分子のシュレーディンガー方程式を解く際にこれまで問題となっていた積分の発散を克服することができる.Scaledシュレーディンガー方程式に基づくFree ICI法を,いくつかの原子・分子系の電子状態に応用し,厳密に正確な解を求めることに成功した.とくに,水素分子では世界記録の厳密なエネルギーを求めることができた.この方法は,自動的に厳密な波動関数の形を生成することから,大きな系の厳密解を求める一般的な方法が確立したといえる.また,複雑な多重積分を計算するために,モンテカルロ法を適用し,さらに大きな多電子系に展開する方法を開発した.これらの方法を基礎として,相対論の効果を含めたDirac型理論において正確な波動関数の構造を検討し,究極的な厳密解を得る方法を開発し,原子・分子に応用した研究を進めている. 2.理論精密分光学と反応の量子ダイナミクス:SAC-CI法の新たな計算法であるダイレクトアルゴリズムの開発を行った.表面吸着分子系の光電子スペクトルを,SAC-CI法とDAM法を組み合わせた方法で研究した.Dirac-Fock法や擬相対論に基づく電子相関理論を,多体摂動法で実現し,磁気遮蔽定数の理論研究において相対論と電子相関の効果の重要性を示した.NOClに対して,6個の励起状態のポテンシャル面を求め,それに基づく量子ダイナミクス計算により光吸収及び共鳴ラマンスペクトルを求め,これまで多く行われてきた実験結果に解釈を与えた. 3.巨大系に共通する電子状態理論:巨大な分子性結晶・分子集合体・化学反応系に応用できる方法を考案した.この方法は構成分子の精密なSAC-CI波動関数をもとに巨大系を記述するものであり,いくつかのクラスターに適用したところ,精密な結果を得ることに成功した. 4.生体反応系の電子論とダイナミクスの解明:視覚や光駆動プロトンポンプで知られるレチナール蛋白質各種についてSAC-CI法により光吸収波長制御メカニズムを研究した.セリンプロテアーゼの酵素反応やFe複核錯体の電子移動反応について蛋白質の効果を含めた理論研究を行った.Fe_2S_2クラスターの電子状態と還元過程についての溶媒和の役割を明らかにした. 5.凝縮系における反応の電子論とダイナミクス:RISM-SCF法を用いて溶液中の光化学反応の自由エネルギー面を計算し,励起状態プロトン移動反応などを研究した.溶液内でのconical intersectionを求める理論的方法の開発を行った.遷移金属イオン水溶液の基底及び励起状態のポテンシャル関数を求める新しい方法を開発し,Ni2+水溶液の吸収スペクトル及び電子励起状態からの電子緩和過程の分子動力学シミュレーション計算を行った. 6.遷移金属錯体の構造と触媒反応のメカニズム:遷移金属錯体の構造および反応過程に関する理論的研究を行い,遷移金属錯体によるアセチレンカップリング反応,交差カップリング反応の反応過程,反応性と中心金属,共存配位子の電子状態との関連を明らかにした.
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