2014 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィル配位ポリマーを用いた光捕集アンテナの創製
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14J00020
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
篠崎 喜脩 日本大学, 理工学部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 光捕集アンテナ / 亜鉛クロロフィル / 配位ポリマー / 自己集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ビニルピリジンを有する亜鉛クロロフィル誘導体が、ピリジン部位の窒素とクロロフィル環中心の亜鉛間の分子間軸配位結合によって、二重らせん配位ポリマーを形成することを報告している (Y. Shinozaki et al. J. Am. Chem. Soc, 2013, 135, 5262)。この二重らせん配位ポリマー内では、2本のポリマーを行き来する励起エネルギー移動経路の効率が高く、光捕集アンテナとしての利用に興味が持たれる。 本研究が目的とする、クロロフィル配位ポリマーを用いた光捕集アンテナの創製のためには、効率の良いエネルギー移動経路を有する配位ポリマーを探索する必要があり、ポリマーの高次構造-分子構造の関係性を把握することを第一目的とした。 亜鉛クロロフィル誘導体の配位部位をビニルピリジンからオキサゾールへ変化させることによって、イス型のポリマーが形成されることが分かり ( Y. Shinocaki et al. Chem. Lett. 2014, 43, 862) 、分子間軸配位の結合軸に対するクロロフィル環の配向がポリマーの高次構造を決定する要因の一つと考えられた。そこで、位置異性体の関係にある4ピリジン (Zn4Py)または3ピリジン (Zn3Py)を有する亜鉛クロロフィル誘導体群を合成し、配位ポリマーを構築した (Y. Shinozak, et al, CrystaEngComm, 2014, 16, 9155)。Zn4Pyはイス型配位ポリマーを、Zn3Pyはらせん状配位ポリマーを形成することが分かり、配位部位を変化させることで、配位ポリマーの高次構造制御が可能であることを見出した。イス型よりも、らせん状のポリマー内の方が、効率の良いエネルギー移動が可能であることが計算上確かめられており、らせん状の配位ポリマーの捕集アンテナとしての有望性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の目的である「クロロフィル配位ポリマーを用いた光捕集アンテナの創製」のために1)配位ポリマーの高次構造-分子構造の関係性の調査、2)単独で安定な配位ポリマーの構築をH26年度の目的とした。 1)に関しては、上記で述べたように、亜鉛クロロフィル誘導体の配位部位の構造がポリマーの高次構造に影響を与えることを突止め、またさらには、ポリマーの高次構造制御も達成している。ポリマー内での相対エネルギー移動効率を計算することによって、らせん状のポリマーが光捕集アンテナとして有望であることも同時に明らかとしている。 2)を達成するために、二重らせんポリマーを形成した亜鉛クロロフィル誘導体に、長鎖アルキルまたはオリゴエチレングリコール鎖を複数有するデンドロンを導入し、基板表面での配位ポリマーの構築を試みた。結果としては、配位ポリマーが形成されなかった。そこで現在、鋳型を用いることで、安定なポリマーの構築を計画している。 その他)上記2)において、デンドロンを導入することで、溶解性の高い亜鉛クロロフィルの会合体が溶液中で形成されることが同時に明らかとなった。電子アクセプターを有する亜鉛クロロフィル誘導体を会合体内に導入することができることが分かった。この会合体が、人工光捕集アンテナー電荷分離系として機能することも明らかとなってきている。本研究のH27年度の計画である「エネルギーアクセプターのポリマーへの導入」の一部が達成されたと言える。電子アクセプターではなく、エネルギーアクセプターでも同様の系を構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)配位ポリマーの高次構造-分子構造の関係性の調査については、H27年度でも継続していく。 2)単独で安定な配位ポリマーの構築に関しては、基板表面上で配位ポリマーの構築ができなかったことから、鋳型内での構築を計画している。鋳型としては、メソポーラスシリカまたはPeriodic mesoporous organosilica (PMO)を用いる予定である。 3)「エネルギーアクセプターのポリマーへの導入」 まず手始めに、エネルギーアクセプターではなく、合成が比較的容易である電子アクセプターを有する亜鉛クロロフィル誘導体を合成した。アクセプターを持たない亜鉛クロロフィル誘導体とベンゼン溶液中で共存させることによって、二種類の亜鉛クロロフィルを同時に集合させることで、新規なアンテナ-電荷分離系が構築できた。溶液中で形成された分子組織体は配位ポリマーではなく、環状四量体であったが、このアンテナ-電荷分離系は、①クロロフィルの環状集合体であること、②低極性なベンゼン中で電荷分離を起こすことから、自然の光捕集アンテナ系にかなり近い模倣体であり、研究課題として価値があると考えられる。さらに、アンテナ-電荷分離系内での全ての光誘起プロセスを解明することに成功している。同様の調査を配位ポリマーでも行う予定であるが、そのためにまず、2)の安定な配位ポリマーの構築が必要である。
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Research Products
(5 results)