2015 Fiscal Year Annual Research Report
高次の宇宙論的摂動論で探る宇宙磁場の起源と宇宙の大局的進化の解明
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14J00063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
嵯峨 承平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙論的摂動論 / 弱い重力レンズ効果 / 宇宙磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、宇宙論的2次摂動論のベクトル型摂動の定式化を集中的に行い、関連する論文の出版、各研究会で報告した。通常、ベクトル型摂動は、線形理論では減衰するため無視される。しかし、2次摂動まで考えたとき、ベクトル型摂動は成長し、観測可能量になりうる。今年度は、2つの観測に対して示唆を与えた。 1. 2次磁場の生成 通常の宇宙論では、ベクトル型摂動が無視される。しかし、宇宙の様々な領域に存在している磁場は、ベクトル型摂動であり、その起源には大きな不定性が存在する。私は、2次摂動を用いてそこから生成されるベクトル型摂動を数値計算し、磁場の大きさを計算した。先攻研究では無視されている効果も全て取り入れて、計算した結果全部の寄与を考慮すると、結果に大きな影響を与えることが分かり、2次摂動で生成される磁場の正確な見積もりを行った。以上の結果は論文として出版済みである。 2. 2次の弱い重力レンズ効果 弱い重力レンズ効果とは、光が遠方から飛んでくる際に曲げられる効果であり、特に重力が弱い場合の効果を言う。重力レンズ効果には、2つの種類があり、ここでは詳細を述べないが、ベクトルモード(またはテンソルモード)だけが作りうるレンズシグナルが存在する。これは観測量であり、例えば宇宙マイクロ波背景放射や、銀河の形状の歪みの測定などから観測される。私は、2次の弱い重力レンズ効果に対して、2次ベクトル型摂動と2次テンソル型摂動の寄与を数値的に計算し、その観測可能性を議論した。その結果、現在の観測では困難なシグナルであるが、現在の宇宙では2次ベクトル型摂動の方が2次テンソル型摂動より支配的な寄与があることを見つけた。これを応用することで、他の宇宙論的な観測の場合、2次ベクトル型摂動だけ考えれば十分であり、観測可能な量があるかもしれないと示唆を与えた。以上の結果も論文として出版済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに2次摂動を計算するための数値計算コードを用いて、可能な観測量を複数予言することができている。 特に今年は、2つの観測量、弱い重力レンズ効果と宇宙磁場に関して研究を遂行することができ、論文として2本とも出版することができた。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、弱い重力レンズ効果に着目する。 前年度は、宇宙マイクロ波背景放射や銀河の形状歪みなどといった弱い重力レンズ効果に着目した。 これをさらに進展させる。具体的には、将来観測が期待されている21cm線の弱い重力レンズ効果に着目する。21cm線はシグナルを大きくすることができ、シグナルノイズ比を小さくすることが可能であると考えられている。 これによって、これまで検出不可能であった効果を引き出すことが可能であると考えるため、今後は21cmレンズ効果について詳細に研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(7 results)