2014 Fiscal Year Annual Research Report
TeVスケールにおける素粒子標準模型を超える物理の研究
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14J00179
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
飛岡 幸作 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子現象論 / ヒッグス粒子 / Large Hadron Collider / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題の中心テーマであるヒッグス粒子の研究に力を注ぎ、理論的側面・実験的側面の両方で進展があった。まず理論的側面では、標準模型を超えた理論である超対称性理論におけるヒッグス粒子質量の計算を行った。1つはゲージ一重項2つを導入した新しい拡張ヒッグスセクターの枠組みを提示した。通常は、現在のヒッグス質量と電弱対称性の破れを同時に説明するのは難しいが、この新しい枠組みではそれが可能であることを示した。また、超対称性が余剰次元から破れを起こしたシナリオで、高次元モードがヒッグス質量にどう影響をあたえるかを受入研究者の北野教授と数物連携宇宙研究機構の村山教授と共同で行った。そのために、計算方法を整備し、高次元の効果を取り入れた有効ポテンシャルの解析解を導いた。現象論に適用するために、さらに研究を進めている。 次に実験的側面では、LHCでは不可能だと思われていたヒッグス粒子とチャームクォークの結合の強さを測定する先駆的な研究を行った。LHC実験は非常に背景事象の多い実験であり、チャームクォークの結合定数の測定は次世代の加速器を待たなければならないと考えられてきた。しかし、現存のヒッグス粒子とボトムクォークの結合を測定する解析を用いれば、チャームクォークの結合定数にある程度の制限を付けられることを発見し、世界ではじめてチャームクォークの結合定数に制限をつけた。さらに、将来の高ルミノシティ-LHCで可能な改善した解析方法とその測定精度を示した。この研究は、イスラエルのヴァイツマン研究所のPerez教授、Stamou研究員、大学院生Soreqと共同で行い、私が主導的な役割を果たした。 その他の研究では、標準模型を超える理論を示唆する強力な証拠である暗黒物質に関する研究に取り組んでいる。これは加速器物理から離れ、最近の天体観測から更なる情報を引き出すことを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、ヒッグス粒子の結合の強さを測る新しい手法は、本課題の大きな進展といえる。なぜなら、現存する実験施設、LHCで可能な限り情報を引き出すことが、TeVスケールの標準模型を超える理論に対する知見となるからでる。 理論的にも超対称性理論におけるヒッグス粒子に関して進展があった。観測されているヒッグス質量では従来の超対称性理論が理論的に不自然になってしまうが、それを2つの一重項のある枠組みでは齟齬がないことをしめした。また、高次元から超対称性の破れを起こすシナリオにおいても、ヒッグス質量の計算方法を整備したことは意義がある。超対称性粒子の直接探査では有力な証拠が現在まで得られていないので、発見されたヒッグス粒子を足がかりに理論の可能性を探るのが現時点での1つの有効な方法である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、先に行ったヒッグスとチャームクォークの結合定数の研究を更に発展させる。LHCに加え、現在検討されている100TeV加速器で、結合定数の測定がどう行われるか、道筋をつけたい。また、チャームだけでなく他の軽いクォークの結合定数も考慮していく。また、超対称性理論におけるヒッグスの質量について、これまで行っている計算も引き続き行う。
新しい方向性としては、天体観測を元にした暗黒物質の研究を行う。特に、ハローだけではなく惑星サイズ以上の構造を作るような暗黒物質が天体観測でどう検出・制限されるのかは興味深い方向性であり、その手法を確立し、暗黒物質の性質を調べていく。これは標準模型を超える物理に対して示唆を与えるはずである。
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Research Products
(7 results)