2014 Fiscal Year Annual Research Report
気孔開口を調節する孔辺細胞のシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
14J00303
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 英伍 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 植物生理学 / 環境応答 / 気孔運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の気孔は一対の孔辺細胞から成り、光によって開口して植物と大気間とのガス交換を調節している。太陽光の中でもシグナルとして作用する青色光は、孔辺細胞の受容体フォトトロピンを介したシグナル伝達によって、細胞膜H+-ポンプのC末端をリン酸化して活性化し、気孔開口の駆動力を形成することが知られている。また近年、フロリゲンFTを含む光周性花成誘導経路と同様の因子が間接的に気孔開口を調節していることが明らかになってきた。
1. ホールマウント免疫染色を利用したスクリーニングと手法の改良:細胞膜H+-ポンプのリン酸化を介した気孔開口調節に関与する因子の同定のため、切り取った葉をそのまま材料に用いてリン酸化レベルを可視化するホールマウント免疫染色法を利用し、自動染色装置による突然変異体スクリーニングを進めた。また、本手法の定量性を向上させる条件検討を行い、孔辺細胞に関して高いS/N比をもたらす手動実験を確立し、候補株の絞り込みへの活用を開始した。 2. 無傷葉の光応答:上述の新手法を利用して無傷葉の光応答について再検討した結果、無傷葉では背景の赤色光下でもH+-ポンプのリン酸化レベルが上昇し、青色光で更に上昇することが示唆された。現在、今回新たに検出された光応答の特性を調べる実験を行っている。 3. 花芽形成因子の気孔開口調節への関与について:FTと孔辺細胞のH+-ポンプのリン酸化との関係を組織レベルで明らかにするため、FTの発現を負に制御するクロマチンリモデリング因子の変異体を材料に、上述の免疫染色を利用してH+-ポンプのリン酸化レベルを調べたところ、変異体は暗所でもリン酸化レベルが比較的高まっていることが示唆された。現在、同変異体とFTの変異体の掛け合わせ実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で確立した実験手法から新たな現象が見出されてきた。そのため、それを詳細に調べる実験を行う必要も出てきた。今後何らかのフィードバックも考えられるが、当初計画していたスクリーニング自体は並行して進めてられており、候補株も得つつある。また実験の定量性の向上に伴い、花成関連因子とH+-ポンプのリン酸化の関係を調べる実験に関しても全面的な遂行に支障はないものと考えられる。 以上を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ホールマウント免疫染色を利用したスクリーニング: スクリーニングを中心に実験を進め、母数を増やすとともに候補株の絞り込みと解析、原因遺伝子同定に向けた準備を進める。
2. 無傷葉の光応答: 今回示唆された結果は新しい発見となる見込みがあるため、可能な限り早急にこの光応答の特性に関するデータを取りまとめるとともに、その生理学的意義を明らかにする実験を行う。また、必要に応じてスクリーニングへのフィードバックを検討する。
3. FT関連因子: 先述の二重変異体の作出を進め、FTの増加によるH+-ポンプのリン酸化の促進を組織レベルかつ遺伝学的に明らかにする実験を行う。加えて、以前気孔開口調節への関与を報告した、光周性花成誘導因子の変異体等も含めて同様の解析を進める。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] A flowering integrator, SOC1, affects stomatal opening in Arabidopsis thaliana.2015
Author(s)
Yuriko Kimura, Saya Aoki, Eigo Ando, Ayaka Kitatsuji, Aiko Watanabe, Masato Ohnishi, Koji Takahashi, Shin-ichiro Inoue, Norihito Nakamichi, Yosuke Tamada, Toshinori Kinoshita
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Journal Title
Plant Cell Physiology
Volume: 56
Pages: 640-649
DOI
Peer Reviewed
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