2014 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖産魚類のミトコンドリア関連遺伝子群における自然淘汰と適応進化
Project/Area Number |
14J00377
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田畑 諒一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | ミトコンドリア / 琵琶湖 / 生物多様性 / 適応進化 / 次世代シーケンサー / 淡水魚 / ミトゲノミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,琵琶湖産魚類を対象に,群集レベルで生じた新規環境(湖沼)への適応進化の遺伝的基盤を,集団遺伝解析,生物情報解析,行動生理学的実験を通じて明らかにすることを目的とする. 本研究では,酸素呼吸機能を通じて運動能力や低酸素耐性等に影響を与えると想定されるミトコンドリア機能関連遺伝子に注目する.具体的には,琵琶湖固有種および琵琶湖で特異的な形態・生活史をもつ7種と,各々の河川性の近縁種・集団について,次世代シーケンサー(NGS)を利用し,mtDNA全長およびミトコンドリア関連の核遺伝子の塩基配列データを効率的かつ大量に取得する.得られた大規模ミトゲノムデータに対して,系統分析,非同義・同義置換(dN/dS)比分析,アミノ酸配列変化パターン解析を行い,適応的変異の候補や淘汰シグナルを検討する.ミトゲノミクス解析から,琵琶湖固有種(系統)のミトコンドリアゲノムにおける自然淘汰が示唆された種群について,固有種とその河川性の近縁種間で,水温,酸素濃度など琵琶湖の生息環境を想定した条件の下で酸素消費量などを計測し,比較する行動生理学的実験を行う. 平成26年度は,予定していた7種群350個体について,ミトゲノムデータが得られた.得られたミトゲノムデータを用いた解析の結果,一部の固有系統で,アミノ酸置換の蓄積程度が他と異なっていた.これらの固有種のほとんどが,沖合を恒常的に利用する生活史をもち,分岐が比較的深い種であったことから,この結果は,琵琶湖の沖合環境への適応進化によりミトゲノムに正の選択(もしくは機能的制約からの解放)が生じたことを支持するものと考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子遺伝解析については、膨大な実験と解析を実現し、一部補完事項を残しているものの、当初の計画通りに沿った進捗が見られ、成果について学会発表を行っており,論文投稿準備を鋭意進めているところである。行動生理実験については、研究進行が試料入手や実験実施に適した季節と整合性が取れなかったため、実現に至らなかった。現在までに、第2年度の実現に向けて計画・実験方法を再検討しており、分子実験成果を活かした形での計画の実現を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画にて,1年目に予定していたミトコンドリア関連の核遺伝子解析,行動生理実験については,進展に遅れが見られているが,前者については,平成26年度中に基本的実験条件について検討を進めてきた.これまでの条件検討により明らかにしてきたため,速やかに本実験に入ることが可能である.ミトゲノムおよび関連遺伝子との比較のため,中立と考えられるマイクロサテライト(STR)周辺領域のデータも上記の実験と並行し,取得する予定である.これについても,関連する研究プロジェクトにおいて,複数の種群から,標的となる多数のSTRマーカーが,すでに取得されている.行動生理実験については、2年目では前年度に得られたデータと先行研究(Fu et al. 2011など)を参考に,研究の進展状況(サンプルの収集状況など)に対応しながら進めていく予定である.
|