2015 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ成虫型時計細胞ネットワークの発生メカニズムと生物学的意義の解明
Project/Area Number |
14J00445
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
瓜生 央大 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 神経ネットワーク構築 / 新規遺伝子解析 / 時計細胞発生 / 神経伝達物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
キイロショウジョウバエは、幼虫期の脳内に15個の時計神経を持つのに対して、成虫羽化後には150個に増加する。しかし、どのようなメカニズムで時計神経が発生するのか、時計神経ネットワークが変化する生物学的意味は解明されていない。本研究の目標は、概日時計の中枢を構成する細胞ネットワークが、幼虫期から成虫期に至る発生過程、すなわち変態期において、どのように(=時計細胞の発生を制御する分子メカニズム)獲得されるのかを解明することを目的としている。 本年度は前年度に見つけた、活動リズム形成に重要な役割を担う時計神経の発生に関わる4遺伝子を詳しく解析した。2遺伝子のノックダウン個体は、リズム形成に重要である時計細胞群s-LNvの細胞数の減少、細胞サイズが小さくなるなどの発生異常が観察された。神経ペプチドPDFは、脳側方部に位置する時計細胞群s-LNv とl-LNvで発現する、最も重要な時計出力因子である。別の2遺伝子のノックダウンは、時計細胞群s-LNvにおいて、PDFの発現が見られなくなった。一方で、同じくPDFを発現する時計細胞群l-LNvでは正常にPDFは発現していた。これらの4遺伝子のRNAi系統で活動記録を解析した結果、活動リズムが消失していることが分かった。 先の研究結果より、時計の出力因子である神経ペプチドPDFは、脳側方部に位置する時計細胞群s-LNv とl-LNvとでそれぞれ異なる発現制御を受けている可能性が示唆された。しかし、PDFの転写因子、エンハンサー領域等はほとんど分かっていない。そこでPDFエンハンサー領域特定を目的として、ショウジョウバエpdf遺伝子の上流解析を行った。その結果、s-LNv とl-LNvの両方の細胞群にGFPの発現が確認された。PDFが特異的な細胞に発現するためのエンハンサー領域の特定に前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は本プロジェクトの達成のために3つのアプローチを設定した。すなわち、概日時計の中枢を構成する細胞ネットワークが、幼虫期から成虫期に至る発生過程において、【1】いつどこで = 発生過程における時間的・空間的な時計細胞誕生の系譜【2】どのように = 時計細胞の発生を制御する分子メカニズム【3】なぜ = 時計細胞ネットワークが幼虫型から成虫型へと変化する生物学的意味、である。平成27年度で【2】における解析を計画していた。 その結果、【2】どのように=時計細胞の発生に関わる遺伝子の解析と、神経伝達物質のエンハンサー領域の解析を進行することができた。このような状況であるので本プロジェクトの達成度は順調に進んでいる、と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、神経伝達物質PDFの発現制御を解析していく。具体的には、pdf遺伝子のエンハンサー領域の特定のため、さらに短く絞り込んだpdf遺伝子上流ゲノム領域をGFP遺伝子融合させたトランスジェニック系統の樹立を行っていく。また、特定したエンハンサー配列に結合する転写因子の探索を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)