2015 Fiscal Year Annual Research Report
抑うつの脆弱性としての自伝的記憶の概括化－メカニズムの解明と介入法の開発－
| Project/Area Number |
14J00543
|
|---|
| Research Institution | University of Tsukuba |
|---|
Principal Investigator |
松本 昇 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
| Keywords | 自伝的記憶の概括化 / 自伝的記憶の具体性の減少 / 抑うつ / 侵入記憶 / 気分不一致効果 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は，自伝的記憶の概括化が抑うつ症状の悪化を招く経路についての検討を行った。次の３つの仮説について，それぞれ実験的検討を加えた。
第一に，ネガティブな自伝的記憶の概括化が侵入記憶を増幅し，その侵入記憶が抑うつの悪化を予測する可能性について文献レビューを行った。さらに，トラウマフィルムパラダイムと自伝的記憶テスト（AMT）を組み合わせた実験による検討を加えたが，ネガティブな自伝的記憶の概括化や侵入記憶が抑うつの悪化を導くとする証拠は得られなかった。
第二に，ポジティブな自伝的記憶の具体性減少が気分改善効果（気分不一致効果）の不足をもたらすという仮説について検討を行った。ネガティブ気分誘導後にポジティブな記憶の想起を求め，気分の改善の程度を測定したところ，自己関連的なポジティブ具体的記憶の減少がネガティブ気分の持続と関連することが明らかとなった。
第三に，自伝的記憶の概括化によって主観的なストレスイベント経験が増幅し，そのために抑うつ気分が増加する可能性を検討した。1か月間の縦断的研究によって，自伝的記憶の概括化と抑うつを二度にわたって測定し，さらに主観的ストレスイベントの測定を行った。媒介分析の結果，主観的なストレスイベント経験が自伝的記憶の概括化の個人差と抑うつ気分とを媒介するモデルが支持された。
以上の知見は，自伝的記憶の概括化が抑うつを予測する経路を明確にするものである。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は当初の計画通り，自伝的記憶の概括化が抑うつを予測する経路を検討を行うことができた。一部，仮説が支持されなかった研究があったものの，総じて順調に推移しているといえる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はこれまでに得られた実証的知見について，論文公刊および学会発表を行う。さらに，前年度までに得られた知見をもとに，自己関連的な自伝的記憶の具体性に着目した介入研究に着手する。介入プログラムを作成し，連携機関において，うつ病患者を対象に実施予定である。
|
| Remarks |
研究成果を発信するための個人webページである。
|
