2014 Fiscal Year Annual Research Report
運動野に可塑的変化を引き起こす低侵襲性人工皮質間接続の開発
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14J00630
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武見 充晃 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 皮質脳波 / 硬膜外電気刺激 / マーモセット / 運動野 / 機能地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1) 低侵襲性の脳神経刺激法(硬膜外電気刺激法)を開発すること、(2) 一次運動野に活動依存的可塑性を引き起こす、低侵襲性の人工皮質間接続を開発すること、(3) 人工皮質間接続が引き起こす活動依存的可塑性による、運動野の活動変化を解明すること、の3点であった。 硬膜外電気刺激法の開発は、概ね目標通り進んだ。海外共同研究機関にて開発された、脳波計測と電気刺激の双方を行うことが可能な皮質脳波電極を用いて、ラットを対象に硬膜外電気刺激を行うことに成功した。また、電気刺激のために電極に通電しても、電極のインピーダンス特性が変化しないことを証明した。この硬膜外電気刺激技術を応用して、運動野の機能地図を短時間で同定する技術を開発し、その技術の妥当性はラット14匹を用いて確認した。これらの内容は、国際学会にて発表した他、その技術に進歩性が認められたことから平成26年11月に国内特許出願した。 一方で人工皮質間接続の開発は、当初計画と比べて遅れが生じている。これは、予備的に開発した人工皮質間接続の性能を評価したところ、海外共同研究機関にてそれまでに開発された皮質脳波電極では生体からの脳活動記録を十分に行えないことが判明したため、その再開発に時間を要したことに起因する。 人工皮質間接続が引き起こす活動依存的可塑性を明らかにするための、随意運動中の脳活動変化を評価するための脳波データの解析法習得は、概ね修得することができた。随意運動中のマーモセットより脳波データを計測し、それぞれのデータに対して時間周波数解析と、機能的結合解析を行った。なお解析技術習得の過程で、4匹のマーモセットより、1匹あたり100試行程度のエサ取り動作中の皮質脳波を計測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硬膜外電気刺激の開発と、随意運動中の脳活動変化を明らかにするための脳波データの解析法習得に関しては、当初の期待以上の研究の進展が得られた。硬膜外電気刺激に関しては、ラット14匹を対象にその開発技術の妥当性を証明し、国際学会発表と国内特許出願を行うことができた。脳波データの解析法も習得することができ、さらに習得過程で計測したデータを以て、来年度以降の論文投稿の目処がたった点は、望外の進展であった。また実験動物が齧歯類から霊長類に変更されたため、来年度の成果次第では、本技術の応用の幅が基礎研究のみならず、臨床応用に向けても大きく広がることが期待される。一方で肝心の人工皮質間接続の開発に関しては遅れが見られるが、これは共同研究機関の開発遅れに由来した、仕方のない事情といえる。それ以外の進捗が極めて順調なため、来年度中の巻き返しは可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、遅れている人工皮質間接続の開発を第一目標に研究に取り組む。その後、開発した人工皮質間接続を、慢性的にマーモセットの運動野に適用する。これは、人工皮質間接続を適用した結果としての「行動レベル」の因果性を証明するには、当初実験動物として供する予定であった齧歯類のラットよりも霊長類のマーモセットの方が、そのバリエーションが豊富であることが期待されたためである。人工皮質間接続によって惹起された活動依存的可塑性は、本年度開発した硬膜外電気刺激を用いての一次運動野の各領域と各筋との対応関係の変化と、記録した随意運動中の皮質脳波の時間周波数解析と機能的結合解析によって明らかにする。
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Research Products
(3 results)