2014 Fiscal Year Annual Research Report
籠型配位子を用いた多核銅錯体によるマルチ銅酸化酵素の反応機構解明
Project/Area Number |
14J00705
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永田 光知郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 多核銅錯体 / 酸素還元 / 籠状配位子 / マルチ銅酸化酵素 / モデル錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチ銅酸化酵素は基質の一電子酸化を伴う酸素の四電子還元反応を触媒する酵素である。酸素の還元反応を行う活性部位は三核銅中心を含む構造を有することが知られており、その反応過程で三核銅peroxo種が生じるとされている。現在までに錯体分子を用いて3つの銅でperoxoを捕捉した例はなく、またその構造に天然が行っている高効率、高選択的な酸素還元反応の鍵があると考えられるため、本研究ではその詳細を調べるべくモデル錯体の合成を行っている。 これまでに申請者は籠状配位子を用いて三核銅(I)錯体1を合成しており、また錯体1は酸素と反応することが判っている。そこで本年度は、酸素との反応を低温でのUV-vis, rRaman, ESR, CSI-MSなどを用いて追跡した。その結果、錯体1と酸素の反応の生成物は3つのCu間をperoxoが架橋した新奇な構造を持つと推定された。また同時に得られた生成物の熱的安定性に関する知見を考慮しつつ、現在低温下にて結晶化による単離を行っているところである。 多核銅錯体1とO2との反応によって得られた錯体2の構造に関する知見を得るため、酸素と同様な配位様式を形成する多核銅disulfide錯体3の合成を行った。錯体3はX-ray, UV-vis, ESR, ESI-MSなどの各種測定により同定を行った。その結果、錯体3は酸化数が異なる4つの銅がdisulfideによって架橋されている構造を有していることが明らかとなった。そこで得られた錯体3の構造を元に錯体2の最安定構造を密度汎関数法にて計算したところ、錯体1と酸素との反応において、二核銅side-on型peroxo部位を持ち、さらに三つ目の銅がperoxoに配位した構造を有する錯体が問題なく生成しうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではマルチ銅酸化酵素の三核銅中心の酸素還元過程を、モデル化合物を用いて詳細に解析することを目的としている。本年度は前例の無い、三核銅peroxo錯体の分光学的性質を明らかにすることができた。密度汎関数法により得られた三核銅peroxo錯体の最安定構造から、3つの銅は酸素のO-O結合を最も活性化するような構造を有することが明らかになり、マルチ銅酸化酸素の酸素活性化様式を良く再現していると考えられる。またこれらの結果により三核銅中心周りの配位環境の再現度の高いモデル化合物を合成する指針が得られた。以上のことより、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
三核銅中心周りの配位環境をより高度に再現するモデル化合物の合成を計画している。現在、籠状配位子の他に補助配位子として塩化物イオンを用いているが、錯体の安定性の低さや酵素の活性中心の再現性を考慮すると、配位子の全ての配位部位を窒素原子へと変更する必要がある。それにより、高い酸化還元電位での酸素分子の捕捉や三核銅peroxo錯体の熱的安定性の向上が期待できる。また、それに付随した触媒的な酸素の還元反応についても行う予定である。
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Research Products
(3 results)