2014 Fiscal Year Annual Research Report
水‐アルコール混合系の固液間および液体内の運動量輸送機構に関する分子動力学解析
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14J00811
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中岡 聡 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / 速度すべり / 水‐アルコール混合液 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学法を用いたシミュレーションにより固液間の速度差である速度すべりについての解析を行った.特に,無極性の固体壁面と工学的に広く用いられる水‐アルコール混合液の間の速度すべりについて扱った. アルコール成分としてメタノールを使用した結果,メタノールは疎水性のメチル基を壁面に向けるように固液界面に吸着され,壁面近傍のメタノール濃度がバルクの濃度に対して高くなることが分かった.また,クエット型の流れを生じさせた非平衡系において,メタノールの吸着に起因して速度すべりが増加し,それにともない壁面が流体から受ける抵抗力が低下することが分かった.抵抗力の変化に関わる因子として固液間の速度すべりと液体の粘性係数の変化が挙げられるが,混合液の粘性係数を均質な系において別途算出することにより,ナノスケール流路の抵抗力では粘性ではなく速度すべりが支配的であることを確認した. 速度すべりの定量的な評価の指標としてナヴィエ境界条件における固液摩擦係数を,上記の非平衡系および壁が静止した平衡系において算出した.平衡系での算出には線形応答理論の観点から導出された既報の2通りの理論式を用いた.算出の結果,平衡系で求めた値が非平衡系と同様の濃度依存性を示すことを確認し,平衡系では非平衡系の約1/20の計算時間で同程度の精度の値が得られることが分かった.この平衡系の算出で用いた式は,並進拡散係数,回転拡散係数,分子の大きさなどの局所的なミクロな分子の性質と速度すべりとを理論的に結ぶ糸口となるものであり,今後の解析において有用となる. これらの成果を国際学会を含む複数の学会で発表したほか,査読付き国際学術誌へ投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,無極性の壁面間における水-メタノール混合系のクエット流の分子動力学系を構築し,メタノールの吸着に起因して速度すべりが増加し,それにともない壁面が流体から受ける抵抗力が低下することを見出した.この系において長時間平均を取ることで,系内の速度勾配,応力分布,粘性抵抗,速度すべりなどを高い精度で求めた.また,本課題の核心となる速度すべりの定量的な評価において,指標となるナヴィエ境界条件における固液間摩擦係数を見積もった.ここまでの成果は国際学会を含む複数の学会で発表したほか,国際学術誌への投稿を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,非平衡系において得られた固液間摩擦係数が線形応答理論に基づく理論式を用いて平衡系においても算出できることを確認しており,この理論式を変形することにより速度すべりのモデルの構築を行っていく.特に,回転拡散係数,並進拡散係数,分子の大きさ,固液界面エネルギーなどの固液界面近傍の局所的なミクロな分子の性質と速度すべりを結びつけることにより,本研究で取り扱う混合系においても適用可能なモデルの構築を行っていく.
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Research Products
(3 results)