2015 Fiscal Year Annual Research Report
関数データ解析的アプローチによる代数的位相アンラップと信号処理問題への応用
Project/Area Number |
14J00920
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北原 大地 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 2次元位相アンラップ / スプライン平滑化 / 代数的連続位相復元法 / 確率密度関数推定 / 凸最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元の複素信号の観測データから,真の連続位相を推定する問題である「2次元位相アンラップ問題」に対し,研究員らのグループは1. 離散複素信号を表現する連続な複素関数を構成し,2. 代数的連続位相復元法を用いて対応する連続位相を厳密に計算する,という2段階の位相アンラップ法を提案している. 今年度は昨年度に引き続き,「実平面上で零点を持たない2次元複素関数の設計法」の研究を行い,より理想的な複素関数の設計に成功した.具体的には,観測される不連続な位相からノイズが含まれている可能性が高い領域を特定し,その領域のデータのみにスムージングをかけ,残りの領域は元のデータを保持する.こうして得られた新しいデータに対し,提案する位相アンラップ法を適応することで,より理想的な複素関数を作ることが可能になり,干渉合成開口レーダによる標高推定のシミュレーションにおいても,既存法を大きく上回る性能を出すことに成功した.提案する位相アンラップ法に関する一連の研究成果を纏めた論文が,信号処理に関するトップジャーナル「IEEE Transactions on Signal Processing」に採択されたことで,提案法の理論と有効性が国際的にも認められることとなった.またコンピューテーショナル・インテリジェンス研究会においても,複素ニューラルネットワークの専門家から高い注目を浴びた. さらには,複素関数の設計に用いたスプライン関数に関する研究も,昨年度同様大きな進展があった.2次元平面の三角形メッシュ上のスプライン関数に対する非負性の十分条件を新たに発見し,ヒストグラムから非負のスプライン関数を用いた確率密度関数の推定を提案した.この研究成果は信号処理に関する国内会議「信号処理シンポジウム」や最大の国際会議「ICASSP 2016」で発表され,国内外の信号処理の専門家から高い評価を頂いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,今年度は位相アンラップの応用対象に応じて,最適化問題の設計を変化させ,より最適な複素関数を設計するというものであった.しかしながら,最適化問題を応用により変化させるという手法を提案するためには,それぞれの応用対象に対する深い理解が不可欠であり,実現には長い時間を必要とする可能性があった.今年度提案した手法は,観測される位相からノイズが含まれている可能性が高い領域を特定し,その領域のデータのみにスムージングをかけ,残りの領域は元のデータを保持することで,理想的な複素関数をよりシンプルな形で実現することができた.この手法は,最適化問題の設計を変化させるのではなく,ノイズが含まれている可能性が高い領域の特定方法を変化させることで,応用対象に応じた複素関数の設計が可能になる.ノイズが含まれている可能性が高い領域の特定方法に関する研究は,過去に多くの報告がなされておるため,それらの研究と組み合わせることで,提案する位相アンラップ法を様々な応用対象に適応可能になる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成28年度では,本研究の集大成として,実際のデータを使って提案法の有効性を示していく.まず,購入した合成開口レーダの実データを用いて,提案法の有効性を検証する.合成開口レーダの実データはデータサイズが非常に大きくなるため,高速計算手法が必要になるが,今年度の「ICASSP 2016」において,研究員らのグループは,すでに主双対法を用いた高速計算法を提案している.平成28年度はこの高速計算をさらに改良させる.具体的には,もとの大規模データをいくつかの局所領域に分割し,それぞれの領域において並列処理で提案している高速計算法を行うことで,さらなる高速計算を実現する. 合成開口レーダの実データにおいて,提案法の有効性を検証した後は,MRIや縞投影(fringe projection)などの他の応用対象に対しても,提案法の有効性を検証する.さらに,スプライン関数に関する研究成果はまだ論文に纏められていないため,平成28年度中に研究成果を纏めて論文にする必要がある.
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