2015 Fiscal Year Annual Research Report
新しいアクティブ標的を用いた中性子過剰原子核の構造研究
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14J00949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古野 達也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 不安定核 / クラスター構造 / アクティブ標的 / マイクロピクセルチェンバー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新しいアクティブ標的を開発し、不安定原子核におけるクラスター構造の探索を目的としている。アクティブ標的を用いることで、これまで技術的に困難であった前方角度での質量欠損分光が可能となる。2015年度はハフ変換を用いた飛跡構築アルゴリズムを開発し、複雑な飛跡データから散乱に関わった反跳粒子、散乱粒子の飛跡を特定することに成功した。これらの粒子の飛跡から励起エネルギー及び散乱角度が求められた。以上の結果を5月にアメリカミシガン州立大学で開催された、アクティブ標的に関する国際ワークショップで報告した。 6月にはRCNPにおいて核子辺り60 MeVの13Cビームを用いたテスト実験を行った。この実験は、不安定核実験と運動学的条件がほぼ同じである。実験では本研究で要請される、1 MeVの低エネルギー反跳アルファ粒子の検出に成功した。 8月にはアクティブ標的を用いた初の不安定核実験ビームタイム獲得のために、RCNP課題採択委員に実験の提案を行った。審査の結果、8日間のビームタイムを得た。この実験では陽子過剰核である10Cを不安定核ビームラインで生成し、アルファ非弾性散乱を行う。得られた励起スペクトル、角度分布からアルファ分子構造を同定する。アルファ分子構造を鏡映核である10Beとの間で比較することで、アルファ分子の内部構造に初めて迫ることを目指す。 6月のテスト実験の結果、現在、不安定核ビームラインでビーム入射位置の測定に用いているPPAC検出器は、安定に動作させることが困難であることが判明した。そこで、より安定した動作、高分解能測定のために、ビームラインMWDCを新たに製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、これまでRCNP不安定核ビームラインで行われてきた実験に対して、比較的原子番号の小さい原子核を対象としている。そのため現在までビーム入射位置測定に用いられてきたPPAC検出器では、安定した動作を得ることが困難となってしまった。そのため、より増幅率の高いMWDC検出器を開発する必要が生じたために、進捗が遅れが生じた。MWDC検出器は既に製作が完了し、現在はビームラインへのインストールに向けた準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビームラインMWDC検出器のインストール作業を中心として、測定に向けた準備作業を夏季までに行う。その後秋には最終テスト実験として2日間の測定を行う。この測定では、新たに開発したビームラインMWDCの性能評価を行う。また10Cビームとアクティブ標的を用いてアルファ非弾性散乱の測定を行う。 実験後は速やかにデータ解析を行い、アクティブ標的の飛跡データとMWDCから得た入射角度から励起スペクトルを求める。2日間のビームタイムで弾性散乱に対しては十分な統計量を得られるので、これを元に励起エネルギー分解能の評価を行う。その後、8日間の本測定を行い、データ解析に移る予定である。
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Research Products
(4 results)