2014 Fiscal Year Annual Research Report
イモリを用いた四肢再生過程における関節形成機構の研究
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14J00980
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 璃水 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | イモリ / カエル / 関節再生 / 四肢再生 / 組織間調和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イモリの肢を関節部で切断した場合の再生の様子を詳細に観察することで、残存部と再生部が調和する仕組みを明らかにすることを目指した。イモリの前肢を肘関節で切断すると、肘関節より先端側はまず元の前腕部のミニチュアとして再生し、のちに大きくなる。このとき、大きな残存部とミニチュアの再生部の間には機能的な肘関節が再生する。どのようにして、この大きさの不一致を乗り越えて機能的な関節が再生したかを調べるため、EFIC(Episcopic Fluorescence Image Capture)と呼ばれる装置を用いて再生した軟骨の形態を三次元的に観察し、定量評価した。その結果、再生した前腕部の軟骨は関節の周りが、残存した上腕骨の大きさに合わせて太くなっていることを示すことに成功した。この結果は、再生過程において残存部の組織が、再生部の軟骨の形態形成に影響を与えていることを示唆した。そこで、残存部の組織がどのように再生部の形態形成に影響を与えるかを調べるため、組織切片を作製し再生過程を観察した。その結果、再生過程で残存部の関節の軟骨の細胞外マトリクスが失われていることを見出した。 これまで有尾両生類の再生過程において、再生部は基部-先端軸が決定したのちは残存部と独立に形態形成を行うと考えられてきたが、本研究の結果により、残存部と再生部の境界付近においては、残存部の組織が再生部の形態形成に大きく関与し、それにより残存部と再生部の構造が調和できることを見出した。 さらに、イモリを用いた研究で見出された知見をもとに、これまで関節を再生できないと言われていたカエルにおいても、イモリと同様に肘関節で切断し、残存部と再生部の相互作用に基づく組織の調和を意図的に誘起することで、機能的な関節を再生できることをはじめて見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において、イモリの前肢を関節部で切断したのちの関節再生過程を観察することで、残存部と再生部の組織の構造が調和する仕組みを定量的に示し、その結果を二度の学会発表とともに、オープンアクセスジャーナル”Regeneration”誌において発表することができた。 さらに、イモリを用いた研究で見出された知見をもとに、これまで関節を再生しないと言われていたカエルにおいても機能的な関節再生を引き起こすことができたことは、当初の予想以上の結果あった。 イモリを用いた遺伝学的実験手法の開発は現在進められているところではあるが、カエルは発生生物学のモデル動物として扱われてきた長い歴史があり、すでに利用可能な遺伝学的実験手法や、遺伝情報の豊富さから非常に強力な実験動物である。そのため、カエルにおいて機能的な関節再生が可能であるという発見は、関節再生の分子・細胞機構を詳細に解析できる可能性を大きく切り開いた。 さらに、この結果をもとに、残存部と再生部の組織間調和のメカニズムを用いることで、これまで関節の再生ができないと言われていた哺乳類においても関節再生を引き起こし、ひいては将来的に再生医療への応用の可能性を切り開くことも期待できるという点で、非常に重要な発見を得たと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、カエルを用いて、関節再生機構の分子・細胞基盤を明らかにすることを目指す。イモリ、及びカエルを用いた研究から、再生過程において残存部の組織の細胞外マトリクスが失われていることが見出されており、それに伴ってFGF2などの増殖因子の局在が変わり、残存部及び再生部の細胞におけるシグナル経路の活性に変化がみられる可能性が考えられる。そこで、カエルの関節再生過程においてERKおよびWntシグナル経路の活性を、免疫染色および、シグナル活性をライブイメージングすることが可能な遺伝子導入カエルを用いて観察する。 また、関節再生過程における力学的作用の役割を明らかにするため、再生過程においてカエルの筋肉を麻痺させ、関節再生にどのような影響があるかを観察する。 さらに、残存部と再生部の組織間相互作用に基づく組織の調和を起こさせることで、マウスにおいても関節を再生できるのではないかという可能性を検証する。
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Research Products
(3 results)