2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J01084
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪井田 賢 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 多成分フェルミ原子系 / ランダムポテンシャル / BdG方程式 / 引力系 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、冷却技術の急速な進展に伴い、様々な種類の原子ガスの量子縮退状態が実現された。これらの原子を光格子に導入した系は様々な電子系モデルの量子シミュレータとしての役割を担うと考えられている。また一方で、この系はボーズ・フェルミ混合系や多成分原子系などの、対象となる物質がほとんどない系を実現し、新奇な量子現象を精査する舞台としても期待されている。冷却技術と共に、レーザー技術も発展し、ランダムポテンシャルを含んだ原子系を実験的に実現することが可能となった。多成分原子ガスをランダム光格子ポテンシャルに導入することによってランダムポテンシャルを含んだ多成分系を実験的に実現することが可能となっているが、この系に対する理論的な解析は未だ行われておらず、理論を整備することは急務である。 このような背景の下、本研究ではランダムポテンシャル中の多成分フェルミ原子系、特にSU(3)、SU(4)引力フェルミ粒子系に焦点を当てた解析を行い、ランダムポテンシャルが量子相に与える影響を理論的に解析した。解析の結果、SU(3)系においては、ランダムポテンシャルが電荷密度波相の秩序を弱め、ある転移点で電荷密度波相-超流動相転移を誘起するということを明らかにした。ランダムポテンシャルによる影響が更に大きくなると、どちらの秩序相でもない、Anderson localized相が基底状態として実現するということを新たに指摘した。また、これら二つの転移が共に一次転移であるということを明示した。SU(3)系と同様の解析をSU(4)系においても行い、その結果、ランダムポテンシャルによって電荷密度波相から直接、Anderson localized相へ転移し、超流動相は基底状態として安定化しないということを明らかにし、この電荷密度波相-Anderson localized相転移が二次転移であるということを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、「研究実績の概要」に書いたように、多成分原子系において基底状態として現出する量子凝縮相を解明し、基底状態の相図を決定した。また、それと共に、今まで予言されていなかった多成分原子系特有の量子相転移を新たに提唱し、この量子相転移を実験的に観測するための物理量も計算した。本研究では、現在の技術を用いて実験的に精査することができるパラメータ領域においての解析を行っており、本解析で明らかとなった相図や量子相転移は実験的に容易に再現・観測されるものであると期待している。 以上の結果をまとめたものは、Physical Review AとProceedingsにそれぞれ掲載され (Physical Review A, 90, 013632 (2014)、J. Phys. Conf. Ser. 592, 012104 (2015))、結果の妥当性については議論され、認められている。今年度の研究では基底状態として安定化する量子凝縮相を決定し、実験的に観測することができる量子現象を予言することを目的として行っており、その目標は達成することができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究は平均場近似を用いた解析を行った。この解析結果の定性的な妥当性は議論されているが、定量性に関しては未だ議論されていない。このため、今後は前年度の解析結果の定量性の評価を行うために、より信頼されている手法を用いた解析を行う。また、研究をより発展させ、有限温度での系の性質を明らかにする予定である。
|
Research Products
(7 results)