2014 Fiscal Year Annual Research Report
マックス・ヴェーバーの中国歴史社会論の射程 -- 「契約」概念を手掛かりに
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14J01132
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
羅 太順 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / M・ヴェーバー / 契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、比較歴史社会学的視点から、「契約」概念を手がかりに形式合理的な側面のみには還元されえない実質合理的なヴェーバーの法思想の検討によって、彼の中国歴史社会論が中国社会の歴史的要因の分析に如何なる理論的枠組みを提供しうるのかを明らかにすることである。そのために設定した二つの課題は、第一に、ヴェーバーが西洋の前近代社会を如何に理解していたかを検討すること、第二に、ヴェーバーが中国の前近代社会を如何に理解していたかを検討することである。 第一の課題を遂行するために、ヴェーバーのレーエン封建制に注目した。まず、ヴェーバーの封建制論に関するこれまでの議論を堀米=世良論争を中心に検討することを通して、ヴェーバーは堀米とは違って、レーエン封建制を、国王が貴族を支配する一つの手段にすぎない単に私法的な性質をもつものではなく、世良と同様に、公法的な性質をもつものと考えていたことが明らかになった。次に、堀米が主に依拠したO・ブルンナーの中世国家論と、世良が主に依拠したH・ミッタイスの中世国家論を考察することによって、ヴェーバーがレーエン封建制論に注目する理由を明らかにした。 第二の課題を遂行するために、ヴェーバーの中国官僚制論に注目した。まず、合理的官僚制を能率志向的な官僚制と見なしてきたいわゆる「ヴェーバー的官僚制論」を見直すことによって、ヴェーバーの官僚制論を再構築した。それと同時に、いかなる点において中国の家産官僚制が合理的であるかを明らかにした。次に、ヴェーバーの中国論に関する議論を余英時などのいわゆる「儒教資本主義論」を中心に検討することによって、ヴェーバーは宗教倫理と経済思想との間に必ずしも因果関係が存在しているとは見ていなかったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この一年間、学会誌投稿論文を書き上げると共に、いくつかの口頭発表を行った。その中には日中学術交流にも貢献できる国際発表が含まれている。投稿論文は、ヴェーバー研究の中で長年議論されてきた「合理性」に関する論文である。この論文は将来の博士論文でヴェーバーの中国歴史社会論を論ずる際、その根幹となるであろう。一方で、ヴェーバーの西洋歴史社会論に関しては、西洋中世学会にて口頭発表を行い、積極的に他分野の研究者との学問的対話を行った。レーエン封建制に関するこの発表もまた、いずれ博士論文でヴェーバーの西洋歴史社会論を論ずる際に不可欠な一章になるであろう。そして、中国のヴェーバー研究の第一人者である蘇国勳の論文を邦訳することによって、ヴェーバーの中国論への最新の批判を検討した。そのほか、今年度後期からのドイツにおける滞在研究は、海外の研究者とも交流する貴重な体験になったに違いない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まずヴェーバーの西洋歴史社会論におけるレーエン封建制についての検討を続けることによって、彼は封建契約に内在する自由な合意と双務契約思想の中に近代国家と「個」の確立の原基の一つを見出したのではないかという仮定を検証する。それと同時に、中国の歴史社会における君主と臣民の間の片務契約に対して如何なる姿勢を取り、中国社会における近代国家と「個」の確立の問題についてはどう見ていたのかを検討する。そして、これらの内容を学会誌に発表するとともに、年末まで博士論文を提出する予定である。
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Research Products
(5 results)