2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J01148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀山 尚史 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | AdS/CFT対応 / シグマ模型 / 可解系 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,q変形されたAdS5×S5上の超弦理論に関して以下の結果を得た.
1.q変形されたAdS5×S5上の超弦理論とスピン鎖の両理論を同じ古典可積分系に帰着させ,その可積分構造を調べた.q変形された弦の作用から非相対論的極限をとって得られるLandau-Lifshitz模型がXXZスピン鎖のHamiltonianのコヒーレント状態に対する期待値の連続極限と一致することを示し,この模型の対称性がsl(2)量子アフィン代数に拡大することを明らかにした. 2.特異平面の物理的性質を調べるため,変形されたAdS部分のみで回転する弦の古典解をプローブとして考え,それが特異平面を越えて伸びないことを示した.これは特異平面の内側の領域に自由度が閉じ込められている可能性を示唆している.また特異平面付近の時空の因果構造の振る舞いは通常のglobal座標でのAdS時空における境界付近の時空の因果構造の振る舞いと同じである.これらの状況証拠からq変形された超弦理論におけるホログラフィーを議論する枠組みとして特異平面をホログラフィック・スクリーンとして取り扱うことを提唱した. 3.q変形された超弦理論で特異平面の内側だけを記述する座標系を構成し,対応するPoincare座標を導出して特異平面に端をもつ極小曲面を議論した.通常のAdS/CFT対応では,強結合におけるN = 4 SYMのWilson loopのvevはAdS時空中の極小曲面と等価であるため,このq変形されたAdS時空中の極小曲面はまだ明らかになっていない双対なゲージ理論の強結合ダイナミクスを与えると期待できる.特に通常のAdS/CFT対応の場合とは異なり,変形された時空における極小曲面の面積には発散項が存在せず有限の値となる.この結果からq変形された超弦理論では変形パラメーターがUV正則子の役割を果たしていると解釈できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.において,このLL模型の対称性がsl(2)量子アフィン代数に拡大するという先行研究にはない結果を詳細に明らかにすることができた.
2.では,q変形された超弦理論においてホログラフィーを議論するためのセットアップを得ることができた.また,回転弦ansatzを課して弦の作用を1次元の可解模型に帰着させ,可解系の三角関数型のクラスに属するNeumann-Rosochatius模型を初めて構成した.これはq変形された超弦理論の可積分構造が三角関数型に分類されることを実際に把握する上でも重要な意味がある.
3.において,この新たな座標系を導入することに成功し,さらに極小曲面とWilson loopの対応関係に関してq変形が果たす役割を理解することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究目的は,AdS/CFT対応の可積分変形,特にそのq変形を解析してその背後に存在するより深い可積分構造を明らかにすることでゲージ・重力対応の本質的な機構の理解に繋げることである. まず,q変形されたAdS5×S5上の超弦理論に双対なゲージ理論の同定を行い,q変形されたAdS/CFT対応関係を構成する.そして,q変形されたAdS/CFT対応を確立するため,q変形されたスピン鎖を用いた解析から同定したゲージ理論及びq変形された超弦理論双方がもつ可積分構造の対応関係を解明する.
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Research Products
(9 results)