2015 Fiscal Year Annual Research Report
インフラトンとゲージ場の相互作用から探る高エネルギー物理学
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14J01204
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 慧 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(ノルウェー、ドイツ) / 異分野間連携(素粒子宇宙理論、磁性) |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度前半は昨年度に引き続き非正定値リーマン計量をもつ空間の曲率テンソルから作られる不変量による分類の研究の取りまとめを行った。University of StavangerのSigbjorn Hervik教授、Anders Haarr氏と共著での論文発表に至った(Sigbjorn Hervik, Anders Haarr and Kei Yamamoto, “I-degenerate pseudo-Riemannian metrics,” Journal of Geometry and Physics, 98 (2015), 384-399)。同時に非平衡状態における場の量子論の研究を継続し、Herranen, Kainulainenらによるケルディッシュグリーン関数の方法の宇宙論への応用についての一連の論文を読み進めた。彼らはelectroweak baryogenesisへの興味からCoherent quasiparticle approximationと呼ばれる近似手法を提案しており、そのインフレーション後のreheatingへの応用可能性を検討したが、適当なモデルを見つけることはできなかった。
非平衡グリーン関数の方法についての研究の副産物として、その線形応答理論を適用して磁性体中の異常ホール効果に関する研究が進展した。東北大学の齊藤英治教授らとの共同研究を行い、スピン波の静磁モードに由来する新しいタイプの異常ホール効果の存在を示すことに成功した(Kei Yamamoto, Koji Sato, Eiji Saitoh and Hiroshi Kohno, “Anomalous Hall effect driven by dipolar spin waves in uniform ferromagnets,” Physical Review B 92, 140408(R) (2015))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インフレーションからのreheatingに関する現象論についての研究は問題の定式化の難しさが主な原因となって進捗が遅いものの、そこで培った微分幾何学の手法や非平衡状態における場の量子論の方法を活用して、数理物理学及び電子スピンに関する物性理論で論文を出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
6月後半からはドイツのJohannes Gutenberg University of Mainzに出張しJairo Sinova教授との共同研究を開始した。本研究の目的は、量子ホール効果やトポロジカル絶縁体で知られているバルクのバンド構造におけるトポロジカル不変量と境界でのエッジモードとの対応を踏まえ、時間反転および空間反転対称性が非自明なバルク時空におけるAdS/CFT対応によって境界CFTにカイラルな構造が現れるかを調べ、その物性物理(例えばスピンホール効果)への応用可能性を探ることにある。またその逆の問題として、トポロジカルに非自明な背景時空上を伝搬する重力波や電磁波がどのようにカイラルなエッジモードを持ち得るかについての研究も行うことを視野に入れている。これまでの議論で、物性物理のフェルミオンに対しては整備されているバルクエッジ対応の理論が、AdS/CFTによる有効場の理論で主に対象となるボソンにはすぐには適用できないことが明らかになり、その定式化を現在行っている。また並行して、今後も引き続き非平衡場の量子論とそのMSSMインフレーションへの応用について模索を続けていく。
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Research Products
(7 results)