2014 Fiscal Year Annual Research Report
双計量ダークエネルギーモデルの宇宙背景放射観測による検証
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14J01236
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊原 由貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 初期重力波 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
超新星の観測から現在宇宙が加速膨張していることがわかっている。その起源はダークエネルギーと呼ばれているが、未だ正体はわかっていない。2つの計量を含む重力理論"双計量重力理論"は一般相対論とは異なり重力子が質量を持つことから、ダークエネルギーモデルになり得ることが指摘されている。 本研究の目標は、この双計量ダークエネルギーモデルが実際の宇宙を記述し得るかを検証することである。そのためには、双計量モデルにおいて観測量を計算し、観測結果との整合性を確認していく必要がある。我々は特に、宇宙初期の加速膨張期であるインフレーション期に注目し、研究を進めてきた。インフレーション期の時空はほぼ一様等方な加速膨張解で記述されるが、量子ゆらぎを起源として計量のゆらぎが生成される。それは、初期重力波と呼ばれている。初期重力波は、将来の重力波干渉計実験の観測対象であり、現在観測が進められている宇宙背景放射の偏光成分の起源であるため、今後の観測によって検証可能である。 まず、双計量ダークエネルギーモデルにおいて加速膨張の起源となるスカラー場を結合させ、一様等方なインフレーション解を構成した。次に、構成したインフレーション解を背景時空として計量に摂動を加え、インフレーション中に生成される初期重力波を計算し、重力波のパワースペクトルの解析的な表式を得た。その結果により、重力波の振幅が一般相対論の場合に比べ小さくなることを示した。さらに、パワースペクトルの傾きが一般相対論の時に比べ大きくなることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
"双計量ダークエネルギーモデルにおいてインフレーション解を構成し、インフレーション中に生成される初期重力波を計算する"という研究計画を達成した。インフレーション解は、前年度解析したインフレーション解の第0近似解であるド・ジッター解の場合と異なり、時空の対称性が低いため、計量同士の混ざり具合が時間依存する結果となった。そのため、その解上での重力波の振る舞いをそのまま計算するのは困難である。我々は、まず重力子同士の相互作用が第0近似で切れるように線形結合を取り直し、インフレーション解において空間膨張率の変化が小さいという第1近似のもとで相互作用表示を用いることで、重力波を計算した。その結果から、重力波のパワースペクトルの特徴を明らかにした。より一般化した双計量モデルにおいての、ド・ジッター解の安定性解析、インフレーション解・初期重力波の解析については今後研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、初期重力波だけでなく、現在の宇宙背景放射観測において既に観測されている温度ゆらぎについても考察していきたい。現在観測されている宇宙背景放射の温度ゆらぎは、インフレーション中に生成される密度ゆらぎが主要な起源となっている。宇宙背景放射の温度ゆらぎの観測は非常に精密に行われているため、双計量モデルの検証に有用と考えられる。双計量モデルにおいてインフレーション中に生成される密度ゆらぎを計算し、密度ゆらぎのパワースペクトルの振幅や傾きなどの特徴を明らかにする。さらに、双計量モデルでは、一般相対論の時と重力の自由度の数が異なるため、インフレーション後のゆらぎの時間発展も異なってくる可能性がある。そのような違いが生じるのか、違いがあるならどのような違いなのかを明らかにしていきたい。より一般化した双計量モデルにおいても、同様の解析を進めていきたい。
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