2014 Fiscal Year Annual Research Report
頚動脈小体におけるセロトニンによる低酸素応答の増強
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14J01273
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
横山 拓矢 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 頚動脈小体 / セロトニン / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
頚動脈小体の低酸素応答はセロトニン(5-HT)によって興奮性に調節されており、5-HTは化学受容細胞および交感神経で産生されている。本研究の目的は、化学受容細胞と交感神経の5-HTによる生理機能を捉え、頚動脈小体の低酸素応答調節機構を明らかにすることである。 化学受容細胞に対する5-HTの作用を、細胞内カルシウム濃度変化を興奮の指標として解析した。Wistarラットから頚動脈小体を採材後、酵素消化によって化学受容細胞の分離培養標本を作製してカルシウム濃度変化を記録した。定常酸素状態(21%酸素)では、5-HTを適用しても化学受容細胞のカルシウム濃度に変化は認められなかった。一方、低酸素刺激液(1%酸素)を灌流している間、化学受容細胞において間歇的なカルシウム上昇が認められ、低酸素と5-HTの同時刺激によって化学受容細胞におけるカルシウム上昇の頻度が増加した。この化学受容細胞の低酸素応答に対する5-HTの作用は、5-HT2受容体拮抗薬ketanserin存在下で抑制された。以上の結果から、化学受容細胞の低酸素応答は5-HTによって興奮性に調節されていることが明らかとなり、化学受容細胞の5-HTは自身の低酸素反応性を増強していると推測された。この成果は論文投稿中である。 頚動脈小体から血管組織標本を分離後、平滑筋細胞および周皮細胞の細胞内カルシウム濃度に対する5-HTの作用を解析した。細動脈では、5-HTを適用しても平滑筋細胞のカルシウム濃度は変化しなかった。一方、毛細血管では、5-HTによって周皮細胞のカルシウム上昇が観察され、この反応はketanserin存在下で抑制された。以上の結果から、5-HTは毛細血管内の血流調節を介して頚動脈小体の活性を増強していると推測された。また、低酸素反応時には生体ラット頚部交感神経幹の神経活動が増加していることが明らかとなり、頚動脈小体は反射的に交感神経による調節を受ける可能性が示された。これらの成果は論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学受容細胞や血管組織標本を用いた実験によって、頚動脈小体の低酸素応答における化学受容細胞と交感神経の5-HTによる新しい調節経路の存在を示すことができた。一方で、当初の研究計画にある生体レベルの電気生理学的解析がやや遅れているが、低酸素ガス吸入実験系のセットアップは概ね終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素状態における呼吸変化を調べるため、低酸素ガスを吸入暴露した際の、生体ラットの呼吸器パラメーター(呼吸数、一回換気量、分時換気量)の解析および血中ガス分圧の測定を行う。また同時に、頚動脈小体を支配する交感神経の切除や頚動脈への5-HT受容体拮抗薬の注入が、頚動脈小体の感覚神経活性や生体の呼吸活動にどのような影響を与えるのかを検討する。
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