2014 Fiscal Year Annual Research Report
ホログラフィック原理に基づく時空の生成機構の解明と膨張宇宙の導出
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14J01324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉下 宗太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 量子重力 / ホログラフィー原理 / ゲージ/重力対応 / Dブレーン / 超対称性 / membrane / 行列模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、超弦理論と量子重力理論に関する研究を行い、3本の論文を発表した。以下で、その研究内容を大まかに述べる。 1. Holographic Holes in Higher Dimensions: ある種の時空上の重力理論はその時空の境界上の場の理論によって記述できると考えられている(ゲージ/重力対応)。本研究では、このゲージ/重力対応に基いて、重力理論における閉曲面の面積という幾何学量が、場の理論のある種のエントロピーに対応するということを詳細に調べた。 2. Ramond-Ramond couplings of D-branes: 超弦理論には低エネルギーで効いてくる無質量モード以外にも無限個の有質量モードが存在する。そのため、弦理論をより理解するには有質量モードの性質も理解する必要がある。我々はBSFTと呼ばれる開弦の場の理論を使って、閉弦の無質量モードの一部であるRamond-Ramond場と開弦のすべてのボソン的なモードがどのように相互作用するかを決定した。この相互作用の形は、今まで知られていたRamond-Ramond場と開弦のタキオンと無質量モードを含むものを開弦の有質量モードを含む形に拡張したものとなっており、superconnectionを使って自然に書くことができる。 3. Random volumes from matrices: 超弦理論と非摂動的には等価であると考えられているM理論には力学的自由度を持つ膜が存在すると考えられている。しかし、膜の理論を素朴に量子化する方法は上手くいっていない。そこで行列模型による非臨界弦理論の定式化のように、膜の世界体積をランダムに生成するような模型を使って、膜の理論を定式化する方法を考えた。この目的のため、本研究ではランダム体積を生成する新たな模型を構築した。この模型の著しい点に、模型のパラメータの適当な極限をとると、生成される空間がまともな3次元多様体の四面体分割に制限される点などがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲージ/重力対応に基いて、重力理論における極小曲面の面積という幾何学量を場の理論のエンタングルメントエントロピーと関係づける笠・高柳の公式を極小曲面に限らないより一般の曲面に一般化した関係式を導出することができた。 また、前年に行った超対称な局所化の方法による場の理論の厳密計算の手法を超弦理論の世界面の理論に適用することで、Dブレーンの電荷に関して新たなことがわかった。 さらに、3次元量子重力理論の離散的定式化を与える新たな模型を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、超弦理論・量子重力理論に関する研究を続け、その基本的性質を明らかにしたい。
研究の推進方策としては以下のようなことを考えている。 研究概要の1の論文をさらに拡張して、重力理論をホログラフィックに記述する方法を研究する。 概要の2の論文で用いた超対称性な局所化の方法を使って、場の理論の非摂動的な性質を調べる。 概要の3で構築した模型に膜の自由度を加え、その連続極限をとる方法を調べる。
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Research Products
(10 results)