2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J01364
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北別府 悠 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 測度距離空間 / リーマン幾何 / リッチ曲率 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず有限次元とは限らない測度距離空間で正の Ricci 曲率を持つものに対して, 直径が有限になるための必要十分条件を求めた. この結果は熱核の縮小性をうまく使って得ることができ, 一般的な random walk 付きの距離空間に拡張できる. さらに直径の上限を熱核を用いて具体的に記述することができた. 熱核の縮小性は与えられた測度距離空間の Sobolev 空間が Hilbert 空間になっているということを経由して得られるが, Sobolev 空間が Hilbert 空間でない場合に同様の結果が成り立つか調べる, すなわち縮小性を持つような確率過程を構成することができるかという問題は今後の課題である. 本結果は Riemann 多様体上ですら知られていなかった評価であり, 測度距離空間の幾何学の Riemann 幾何学への還元ともみなすことができる. 現在この結果に関する論文を作成し投稿中である. また一月から三月の間ドイツは Bonn の Hausdorff 研究所に滞在した. そこで幾つかの共同研究を始めた. 現在 Sajjad Lakzian 氏(HCM)と低次元の RCD 空間の分類問題に取り組んでおり, 次元が真に2より小さい場合の分類に成功した. この結果は Ricci limit 空間と呼ばれる, Ricci 曲率を一様に下から抑えた多様体の列の Gromov-Hausdorff の意味での極限空間における分類定理の類似であるが, 測度についての情報も凸性を用いて記述している点が新しい. 本研究により考察すべき低次元の測度距離空間が明らかになり, そのような空間上の random walk を具体的に考察することが可能になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱核の定量的な性質から距離空間の直径を評価した今年度の仕事は, 適切な random walk の概念の定義に役に立つと考えている. すなわち確率過程としてなんらかの縮小性を持ったものを考えることで, 空間の幾何学的な情報をより詳しく得ることができる. さらに, 逆に縮小性を持たない熱核を持つような空間でその熱核だけから幾何学的な情報を得ることができるか考えることも面白い問題であると考えている. また低次元 RCD 空間の分類は性質の良い測度距離空間は何かという問いへの一つの答えであり, ひいてはその上の確率過程等の研究に役立つものであると考えている. 次元の高い RCD 空間においても特別な場合にこの分類を用いて考えることができるので, この結果の応用範囲はさらに広いと思われる. しかしながら本年度は離散的な空間に対する具体的な研究, Wasserstein 空間上の解析にまでは到達することができなかった. したがって完全に予定通りとは言えないが, おおむね研究は順調に進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在進行中の低次元 RCD 空間の研究を進める. RCD 空間上で定義される regular set という概念がある. この regular set 上適切に定義される次元が存在するが, この次元が測度距離空間上一定であるかどうかは未解決である. Ricci limit 空間ではごく最近崩壊する場合でさえ一定の次元を持つことが証明された. しかしながらRCD 空間上では Ricci limit 空間で我々が利用できるような幾何学的な手法がうまく使えないことが多い. したがって最適輸送の技術を駆使して RCD 空間の局所的な性質を調べる. 特に最近, 一次元のピースに空間を分解して最適輸送を具体的に記述することで, 等周不等式などの幾何学的に重要な不等式の証明を得るということがなされている. 基本単位となる一次元のピースの分類はまさに今我々が行っていることなので, 次元の高い RCD 空間の研究にも初年度の研究が必ず役に立つと考えている. 特に一次元のピースは基本的には区間ないし直線上に重み付きの Lebesgue 測度を与えたものになるが, この重みに関する情報を既に得ているので, さらに詳しい解析が可能であると予想している. さらに一次元のピースに分解すること自体は RCD よりももう少し広いクラスの測度距離空間で可能である. したがって以上の研究は RCD 空間だけでなくさらに広いクラスの測度距離空間ないし random walk が付随した距離空間の研究に応用できると考えている.
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Research Products
(7 results)