2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J01393
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 憲司 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ジベレリン / アンセリジオーゲン / シダ植物 / 性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、GA合成や受容成立以前・以降を通してGAシグナルが生殖器官の形成にどのように関わるのか明らかにする。 近年、GAシグナル経路上で働くGAMYB転写因子が、GA合成成立以前のコケの時代から造精器の発達にも関わることが報告された。コケ植物の一種ヒメツリガネゴケには二つのGAMYB遺伝子が存在する。そこで、両PpGAMYB遺伝子を破壊した二重破壊株を作出した。この二重破壊株では全く造精器が形成されず、二つのPpGAMYBが冗長的に機能していることが明らかとなった。次にPpGAMYBの下流で働く遺伝子を探索するため、造精器形成直前の野生型と破壊株の茎葉体茎頂からRNAを抽出してRNAシーケンスによる発現解析を行った。その結果、発現減少遺伝子の5’上流域にはGAMYB結合配列が高頻度に存在することがわかった。この結果は、転写因子GAMYBが転写活性化因子として雄性生殖器官形成を制御することを示唆する。 さらに、GA合成成立が確認されているシダ植物の性決定について、そのメカニズムを明らかにすることができた。これまで、一部のシダ植物でジベレリンと類似した構造を持つ「アンセリジオーゲン」が前葉体上の造精器誘導に関わることが報告されていたが、その作用機構は不明であった。そこでアンセリジオーゲンの構造が決定されているシダ植物の一種カニクサを用いて造精器誘導の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、シダ植物であるカニクサを用いて、造精器(雄性生殖器官)誘導にジベレリンシグナルが関与していることを明らかにすることができた。 カニクサのアンセリジオーゲンはジベレリンに類似した構造を持つが、3位水酸基が無く、6位カルボキシル基がメチル化されているといった相違がある。そこで3位水酸基の有無がアンセリジオーゲン機能に重要なのか調べるため、3位水酸基付加を行うGA 3-oxidaseの阻害剤(プロヘキサジオン)を処理して、造精器誘導に変化があるか観察した。結果、アンセリジオーゲンによる造精器誘導は、プロヘキサジオン処理により阻害されることが確認された。 さらに、アンセリジオーゲンとジベレリンに応答する遺伝子を網羅的に調べるため、次世代シーケンサーによるmRNAの網羅的解析を行った結果、アンセリジオーゲンとジベレリンに応答する多くの遺伝子は重複することが確認された。以上の結果からアンセリジオーゲンは、ジベレリンに変換された後、造精器の誘導に関わっていると推論した。 今年度は、以上の研究成果を取りまとめた論文を報告することができ、当初の計画よりも進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、ヒメツリガネゴケにおいて、造精器形成直前の野生型とPpGAMYB遺伝子を破壊した二重破壊株の茎葉体茎頂からRNAを抽出してRNAシーケンスによる発現解析を行った。その結果、729個の発現変動遺伝子を見いだした。PpGAMYB遺伝子を破壊した二重破壊株における発現変動遺伝子が、種子植物でも共通的に機能するか否かを検討するため、全発現変動遺伝子についてイネやアラビドプシスのオーソログ遺伝子の抽出を行い、シロイヌナズナの花粉発達に働くAMSやMS1のオーソログ遺伝子が含まれることを確認した。さらにイネオーソログ遺伝子の器官別発現を調べたところ、多くのオーソログ遺伝子がイネの花粉で特異的に発現することが解った。これらの結果から、コケと種子植物の造精器形成にはPpGAMYBが必須で、両者の胞子発達・造精器形成における分子機構は類似していると想定した。今年度は、「コケ植物と種子植物間で、胞子形成や造精器形成に共通した転写ネットワークが機能する」という仮説を検証するために、ヒメツリガネゴケにおいてPpGAMYBによるPpAMSとPpMS1転写制御の確認およびPpAMSとPpMS1破壊株の表現型調査を行う。さらに、シロイヌナズナにおいてAMSやMS1の発現がGA信号伝達の制御下にあるかを検証する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Isolation of a Novel Lodging Resistance QTL Gene Involved in Strigolactone Signaling and Its Pyramiding with a QTL Gene Involved in Another Mechanism2015
Author(s)
Kenji Yano, Taiichiro Ookawa, Koichiro Aya, Yusuke Ochiai, Tadashi Hirasawa, Takeshi Ebitani, Takeshi Takarada, Masahiro Yano, Toshio Yamamoto, Shuichi Fukuoka, Jianzhong Wu, Tsuyu Ando, Reynante Lacsamana Ordonio, Ko Hirano and Makoto Matsuoka
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Journal Title
Molecular Plant
Volume: 8
Pages: 303-314
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Antheridiogen determines sex in ferns via a spatiotemporally split gibberellin synthesis pathway2014
Author(s)
Junmu Tanaka, Kenji Yano, Koichiro Aya, Ko Hirano, Sayaka Takehara, Eriko Koketsu, Reynante Laesamana Ordonio, Seung-Hyun Park, Masatoshi Nakajima, Miyako Ueguchi-Tanaka, Makoto Matsuoka
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Journal Title
Science
Volume: 346
Pages: 469-473
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] De Novo Transcriptome Assembly of a Fern, Lygodium japonicum, and a Web Resource Database, Ljtrans DB2014
Author(s)
Koichiro Aya, Masaaki Kobayashi, Junmu Tanaka, Hajime Ohyanagi, Takayuki Suzuki, Kenji Yano, Tomoyuki Takano, Kentaro Yano and Makoto Matsuoka
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Journal Title
Plant Cell Physiology
Volume: 56
Pages: e5
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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