2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J01434
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 敦士 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 古代 / 仏教 / 写経 / 法会 / 南京三会 / 仁王会 / 仁王経 / 季御読経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、写経と法会に注目することで、日本古代における国家と仏教の関係を解明することを目的とする。
1、南京三会の成立過程とその背景について検討した。その結果、南京三会は複雑な変遷を経て、最終的には9世紀後半に成立したことを明らかにした。変遷の背景には、貴族や僧侶たちの思惑を想定すべきである。南京三会は、藤原氏・天皇・源氏(王氏)を藤原氏の優位を示す形で統合するものであり、南都僧侶たちが僧綱内の真言宗勢力を抑制しようとするものであったと論じた。南京三会は宮廷貴族社会・仏教界に新たな秩序を形成し、儀礼の繰り返しによって、その秩序をさらに強化していった。
2、平安前中期における仁王会の展開について検討した。その結果、一代一度仁王会が、時期確定・場所確定という二段階の画期を経て、9世紀後半に成立したことを明らかにした。国家仏教を論じる上で、二大護国経典である『金光明経』『仁王経』とその思想の地方への浸透や、それらに基づく護国の呪力を発動するための法会の整備という点を重視するならば、日本の古代国家における国家仏教体制の完成時期は、9世紀後半に求められる。また、10世紀後半になると、臨時仁王会は大極殿百高座化と春秋二季化という二つの変化をみせた。どちらの変化も季御読経の影響を受けたことによって生じたものであり、臨時仁王会は季御読経に類似した形態となり、独自の意味を失っていく。一方で、三会では掌握できなくなった僧侶たちをカバーするという重要な機能が強化された。このような10世紀後半の変化は重要であるが、法会体系全体の形はそれほど変わらず、9世紀後半頃から11世紀末頃までは、ひとつの時代として把握できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国家的法会体系の中核となる南京三会の研究を論文として公表することができた。また『金光明経』と並んで代表的な護国経典である『仁王経』を用いた仁王会について検討し、写経・法会からみた国家と仏教の関係について大まかな変遷を描くことができた。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、主に南京三会と仁王会について成果を得た。今後は、これらに匹敵する重要な法会である季御読経の研究を進める。仁王会の展開には季御読経が大きな影響を与えたと思われるため、法会体系の中で季御読経を捉えるという視角を重視したい。また、本年度の研究で扱った『仁王経』だけではなく、『大般若経』や一切経の写経・勘経についても検討し、法会を支えた写経のあり方を解明する。
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Research Products
(4 results)