2015 Fiscal Year Annual Research Report
平面共役高分子・液晶としてのキメラ分子設計とその電子機能性
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14J01480
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井出 茉里奈 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 導電性高分子 / 交互共重合体 / 二次元微小角X線回折 / ベンゾチエノイソインディゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
有機薄膜太陽電池に用いる高分子材料として、非対称な分子であるベンゾチエノイソインディゴ (BTIDG) を含む交互共重合体を用いた。昨年の結果より、先行研究の TIDG 材料よりも高い光電変換効率を示し、高分子骨格への非対称性の導入が効率の向上に有利であると示した。 今年度は、フッ素の置換基導入により、さらなる光電変換効率の向上を目指した。材料合成に使用する市販試薬により、フッ素の導入位置を選択的に決定でき、純度の高い分子を得ることに成功した。しかし、フッ素導入による太陽電池特性の改善効果は見られず、高分子鎖の配向など膜物性にも大きな効果があるとはいえなかった。これは、高分子骨格のモノマーユニットに対するフッ素の体積比(面積比)が小さく、高分子鎖の配向制御や光電変換特性の制御に不十分という結果である。 同時並行の研究課題として、申請した内容外ではあるが、非対称構造を有する高分子材料への規則性の導入も試みた。これは、非対称分子である BTIDG を規則的に配列させることでマクロに現れる構造を制御し、太陽電池の光電変換効率向上を目指すものである。すでに合成ルートは確立されており、収率の改善と実際の重合過程の制御によって、太陽電池材料を合成できる段階まで進んでいる。 TIDG, BTIDG 材料の液晶性を鑑みると、コア分子が小さいために、いかにして芳香環を大きくかつ硬くするかが鍵となる。すでに IDG 末端に三重結合を含む流動性の高いアルキル側鎖を導入したものの、液晶相は発現しなかった。ただし、色は赤色 ~ 紫色、もしくは青色と幅が広く、液晶材料もしくは電池材料としての活用が見込まれる。コアと流動性の最適な組み合わせを見つけるため、さらなる合成を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題研究はおおむね予定通り進行している。初年度に達成した新規化合物で、太陽電池特性を評価し、想定以上の効果が得られた。特に、類似化合物との比較検討を加えたことで、材料合成の根幹となる設計指針が新たに得られ、これは当該研究以外にも適用可能である。材料の設計の幅が広がるとともに、比較検討することで多数の化合物を一度に検証したことで、デバイス評価の精度が向上し、太陽電池効率の向上につながったと考えている。今年度に合成した太陽電池材料は、有機薄膜太陽電池の高分子材料の中でもトップクラスの配向性を示し、単一膜中だけでなく太陽電池の膜中でも高い配向性を保持していた。これは太陽電池の効率向上につながり、着想の元となったチエノイソインディゴ共重合体で得られた材料の20倍近くまで効率が向上した。
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Strategy for Future Research Activity |
有機合成・精密重合による、太陽電池材料のさらなる配向性の向上、及び太陽電池の効率向上を目標とする。特に、前年度で得られた効率を超える材料が求められるため、有機合成による細かい置換基制御や、精密重合が求められる。太陽電池デバイス作製には、従来通りの手法にプラスして、電子物性をより精密に測定可能な装置を用いて、電荷移動度や電荷分離効率など、太陽電池効率に直接影響する値を調べる。
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Research Products
(5 results)