2014 Fiscal Year Annual Research Report
電磁機器の解析・最適化のための圧粉磁心の数理モデルに関する研究
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14J01503
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 泰久 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 圧粉磁芯 / 均質化 / Ollendorffの式 / 有限要素法 / 磁気回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は,本研究以前に,電磁界解析技術を用いて,圧粉磁芯を構成する磁性粒子のミクロな物性からマクロな磁気特性を求める数値解析手法を開発していた.これまで一般的に圧粉磁芯のマクロ磁気特性の算出に用いられていたのはOllendorffの式であり,線形磁気特性時には申請者が開発した数値解析手法はOllendorffの式と一致したマクロ磁気特性が得られる.本研究は,その開発した数値解析手法を磁性粒子の1.渦電流特性,2.ヒステリシス特性,3. 応力による粒子形状の不均質性,以上の3つを考慮して拡張することが目的である.採用1年度目では,上記の1,2を計画していた. 1の研究を進めていく中で,圧粉磁芯を構成する磁性粒子の体積充填率が重要なパラメータであることがわかった.Ollendorffの式あるいは開発した数値解析手法を用いて圧粉磁芯の渦電流損失を算出すると,実測値の1/3程度になることがわかった.実測値と同様な渦電流損失を得るには,実効的な体積充填率を用いなければならず,それはいずれの場合も体積充填率より大きな値となる.この原因として考えられるのは,磁性粒子間の物理的接触や,磁性粒子間の非磁性体膜・空隙の不均一な分布が挙げられる.したがって,上記がどの程度,圧粉磁芯のマクロ磁気特性に影響するのかを究明するのが先決と考えた. 上記を究明するために,実際の圧粉磁芯の断面図写真をもとに2次元有限要素法を用いて電磁界解析を行い,申請者が開発した手法で圧粉磁芯のマクロ透磁率を算出すると実測値に近い値が得られた.Ollendorffの式やこれまでの数値解析手法では,実測値との決定的なずれが生じる知見が得られたことの意義は大きい.また,申請者は,磁気回路法を基礎として,磁性粒子と非磁性体膜・空隙の分布を対数正規分布で表現し,圧粉磁芯のマクロ磁気特性が予測できる数値解析手法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,申請者が開発した圧粉磁芯を構成する磁性粒子のミクロな物性からマクロな磁気特性を求める数値解析手法を,磁性粒子の1.渦電流特性,2.ヒステリシス特性,3. 応力による粒子形状の不均質性,以上の3つを考慮して拡張することが目的である.採用1年度目では,上記の1,2を計画していた. 1の研究を進めていくなかで,圧粉磁芯を構成する磁性粒子の分布の不均一性の考慮法の検討に時間がかかったため,研究計画遂行の遅れが発生した.しかし,上記の不均一性を考慮せずに1,2を遂行しても実測値との決定的なずれが生じる知見が得られたことの意義は大きい.したがって,研究目的の達成度に関してはやや遅れはあるものの,確実に目的に近づいていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
圧粉磁芯を構成する磁性粒子の不均一性がもたらす影響の知見が得られたため,これを考慮して申請者が開発した,電磁界解析技術を用いて圧粉磁芯を構成する磁性粒子のミクロな物性からマクロな磁気特性を求める数値解析手法の,次の3点を考慮した拡張を行う.1.渦電流特性,2.ヒステリシス特性,3. 応力による粒子形状の不均質性の3点である.さらに,申請時にすでに開発していた数値解析手法とともに,1年度目に開発した磁気回路法を用いた新たな数値解析手法においても上記3点における拡張を試みる. また,圧粉磁芯を構成する磁性粒子の物性値から,圧粉磁芯の渦電流損失やマクロな透磁率などのマクロ磁気特性が算出できるガイドラインのような等価式を,上記の解析結果から経験則的に構築していく.
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