2014 Fiscal Year Annual Research Report
フェナレニルを基盤とした有機ラジカル一次元集積体の構築と固体物性
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14J01526
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内田 一幸 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | フェナレニル / 一次元集積体 / 二光子吸収特性 / 混合一次元集積体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は炭化水素ラジカルであるフェナレニルを基盤とした有機ラジカル一次元集積体の構築とその固体物性の解明をテーマに研究を行っている。有機ラジカルの一次元集積体は不対電子に由来する磁性や導電性を発現することが知られており、材料化学の分野で盛んに研究が行われている。中でも、炭化水素ラジカルであるフェナレニルを基盤とした一次元集積体はその強い不対電子間相互作用に起因して、高い二光子吸収特性を示すことが理論的に予測されており、次世代の有機材料として期待されている。申請者はこれまで、フェナレニルに分子修飾を施し、安定性の向上と集積化構造の制御を同時に達成したことを報告している。 この研究結果から、置換基が集積化構造に及ぼす影響をより詳細に検討する必要があると考え、当該年度では新たに2種類のフェナレニル誘導体を設計・合成した。これらの新規誘導体の電子構造は様々な分光測定を用いて明らかにすることができ、海外の研究者との共同研究によりその集積化構造と置換基の効果を詳らかにすることができた。これらの誘導体は単体では一次元集積体を構築しなかったものの、これまでに合成した誘導体と混合し集積化を試みたところ、フェナレニルが一次元的に積層した新規一次元体の構築に成功した。この集積体において2種類の誘導体が交互に積層しており、これまでに報告されている単一の一次元集積体とは明らかに異なる電子構造を有することが明らかになった。この違いは2種類の誘導体を混合したことで一次元鎖内に分極構造の寄与が発現したことを示しており、二光子吸収特性の大きな向上が期待できる。 このように当初の研究計画とは異なるものの、偶然の発見から新しい一次元集積体を構築することに成功し、研究目的の達成に大きく前進したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究経過からフェナレニルを基盤とした一次元集積体を得るための分子設計指針を発見し、実際に物性測定を行うにあたって理想的な物質の構築に成功している。また、性質の異なる誘導体を混合することで一次元集積体の電子物性を制御できる可能性を見出しており、一次元集積体の物性を明らかにする上で適した材料を創出することができている。一方でその固体物性、とりわけ非線形光学特性に関する検討は行えておらず、最終年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、有機ラジカル一次元集積体の固体物性を明らかにするために必要な物質の開発に成功しており、最終年度はその固体物性に関する測定を中心に研究を進める予定である。具体的には、固体状態における二光子吸収測定を行い、その二光子吸収断面積から一次元体の性質を明らかにする。この際、新たに得られた混合一次元集積体とも比較することで、一次元鎖内の分極構造の影響を議論できると考えている。
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Research Products
(7 results)