2014 Fiscal Year Annual Research Report
不凍タンパク質に着目したカジカ上科魚類の寒冷地適応に関する分子生態学的解明
Project/Area Number |
14J01530
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 彩 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 寒冷地適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は北半球全体に生息するカジカ上科魚類の寒冷地適応を分子レベルで解明することである。 不凍タンパク質(以下AFPs)の獲得および保持は極域に生息する生物に特徴的な形質であり、氷点下における体細胞の凍結を阻止する働きを持つ。冷温帯に起源を持つカジカ科魚類の寒冷地への適応には、氷点下での生存を可能とするAFPsの獲得が大きく関わっていると考えられる。そこで、本研究ではカジカ科魚類の寒冷地適応を分子レベルで解明するために、当該年度はカジカ科各種の不凍活性の有無を調べた。サンプリングは北極海(2013年7月)、アラスカ(2014年3月)、北海道(2014年10月~2015年4月)、むつ湾(2013年12月)、佐渡島(2014年2月)、伊豆(2014年3月)で行い、計カジカ科19属28種を採集した。不凍活性の測定は、産業総合技術研究所北海道センターにて行い、試料は筋肉を等重量の水で作成したすり身懸濁液の上清を使用した。その結果、カジカ科における不凍活性は北極海、北海道に生息する種で高い活性を示し、アラスカ、むつ湾以南の日本に生息する種で活性が低い、もしくは失っている種が多かった。また、全ての採集地点において、深海(水深50m以深)、あるいは潮間帯(水深0m付近)に生息する種では不凍活性を失っていることが明らかになった。凍結海域に生息する潮間帯性種で不凍活性を失っていることは、他の耐凍方法が存在する可能性、もしくは貧酸素耐性や乾燥耐性の維持が重要であることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究で使用されていたプライマーが使用できず、他のカジカ科におけるAFP遺伝子配列を決定することができなかった。そのため、AFP遺伝子構造および遺伝子発現量の解析を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究が行われてきた種と同じ属(ギスカジカ属)におけるAFP遺伝子配列を急ぎ特定する。その際、通常のPCRからnested PCRに変更し、クローニングにより各配列を単離、解読を試みる。ギスカジカ属で配列決定後、他のカジカ科における配列の解読に移行する。また、本科における北極海への進出時期の推定も行う。
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Research Products
(4 results)