2014 Fiscal Year Annual Research Report
急速に成長する活動銀河核の探査と構造の理解による巨大ブラックホール形成史の究明
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14J01550
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川室 太希 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / X線 / 全天X線監視装置MAXI / X線観測衛星「すざく」 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線観測衛星「すざく」と Swift/BAT を合わせた広帯域X線スペクトルを用いて、低光度活動銀河核のダストトーラスの性質について調査した。その結果、活動銀河核の活動性が小さくなるほど、ダストトーラスの存在を示唆する鉄輝線の強度が小さくなるという傾向が見られた。また、これまで統計的な解析では見逃されていた、低光度活動銀河核のトーラス構造の大きさには多様性が存在することを発見した。この結果については、現在論文にまとめている。
全天X線監視装置 MAXI で得られた37ヶ月のデータを用いて、全天で一時的に明るい突発天体の調査を行った。その結果、第2版 MAXI/GSC カタログでは見逃されていた突発天体を新たに12個検出することに成功した。それに伴って、超巨大ブラックホールによって星が破壊される潮汐破壊現象を3例検出することに成功した。そのうち2例は、相対論的ジェットを伴う現象であった。このサンプルを用いて、潮汐破壊現象の発生頻度の光度依存性を導出した。これは、全天を常時モニターすることで、突発現象でもピーク光度を正確に求められる MAXI の特性を十分に活かした研究になっている。また、導出した関数をもとに、相対論的ジェットを伴う潮汐破壊現象の割合や、潮汐破壊現象によって超巨大ブラックホールに供給されうる質量を定量的に求めた。その結果、ジェットを持つ潮汐破壊現象の起こる割合は、全体の1%未満であり、この現象が極めて稀有であることがわかった。また、活動銀河核によって超巨大ブラックホールに供給されうる質量と比較して、潮汐破壊現象で供給されうる質量は十分に小さく、潮汐破壊現象は超巨大ブラックホールの成長にはあまり効かないことが示唆された。以上の結果については、国内、海外問わず口頭発表を行っており、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、MAXI/GSC を用いて全天で一時的に明るい突発天体の探査は既に完了している。また、その探査の結果、潮汐破壊現象という想定外の現象を検出し、その研究も含めて論文を執筆中である。また、もう一つの目的である第2版 MAXI/GSC カタログの未同定天体に対する、Swift/XRT を用いた同定プロジェクトについては、現在観測提案を行っている途中である。以上の2点から当初の計画の大半について進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまでの低光度活動銀河核と潮汐破壊現象についての結果をまとめ、論文化する。そして、低光度活動銀河核と比較して、当初の研究対象である急成長状態にあると考えられる狭輝線セイファート1型銀河を含めた議論を行うべく、中高光度の活動銀河核の活動性とダストトーラス構造について研究を行い、論文化を目指す。以上と並行して、低光度活動銀河核の研究により示唆された、活動性とダストトーラスの相互関係を物理的に解釈するため、電波望遠鏡 ALMA に対して観測提案をする。
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Research Products
(5 results)