2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯林における林冠植物の種多様性と人為撹乱のインパクト
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14J01551
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 晃 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 林冠植物 / 着生植物 / 熱帯林 / 種多様性 / 森林生態学 / 国際研究者交流 / タイ:マレーシア:インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
着生植物をはじめとする林冠植物の多様さと豊富さは熱帯林における特徴であるが、森林が急速に減少する東南アジア熱帯においては林冠植物に関する研究事例が少なく、林冠植物群集の保全に向けたデータを集めることが急務となっている。 本年度は、主要な調査地であるドイインタノン国立公園(タイ)では雨期と乾期に1回ずつ合計2度の現地調査を行い、森林内における林冠植物の空間分布を記録するとともに林冠内部の微気象を明らかにするために気温と相対湿度、光環境を林内の多点で測定した。これまでの解析から、同じ林分内でも主に上層部に出現する林冠植物種はサイズが大きい樹木上に偏って出現する一方で下層部に出現する種は樹木サイズにかかわらず均等に出現する傾向が見られた。さらに、谷部と尾根部の林分を比較すると出現する林冠植物の種構成が異なるだけでなく、両方に出現する種に関しても出現の頻度や位置が異なることが明らかとなった。このような林分単位での林冠植物の空間分布を扱った研究は少なく、これまでの結果は貴重な成果である。今後は微気象や生育場所の特徴(枝の位置、太さ、角度など)を合わせて解析することで林冠植物の空間分布を規定する要因を考察する。以上の内容について論文を執筆中であり、今後論文の投稿と学会発表を行う。 また、その他の調査地であるランビルヒルズ国立公園(マレーシア)と屋久島(鹿児島県)をそれぞれ初めて訪れ、現地の研究施設の確認と林冠植物の種多様性に関する予備調査を実施した。 7月にケアンズ(オーストラリア)にて開催された国際学会ATBC2014にてドイインタノン国立公園の林分における林冠植物の空間分布に関する研究発表を行った。また、3月に鹿児島にて開催された日本生態学会において、企画者の一人としてツリークライミングを手法として用いた生態学研究に関する企画集会を計画・実施し、集会内で発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な調査地であるドイインタノン国立公園における必要なデータは一部を除いて本年度で取り終えることができた。また、ランビルヒルズ国立公園においても新たに調査を実施することができた。これらに関してはデータ分析も開始していることから、計画通り順調に進んでいる。 本来の計画であればインドネシアのグヌンハリムン国立公園において調査を開始する予定であったが、調査許可取得の問題で本年度は調査を行うことができなかった。しかしながら、その代わりに屋久島において調査を実施することができたため、異なる調査地でのデータが得られた。また、本年度に屋久島で調査を実施できたことから、次年度にグヌンハリムン国立公園での調査に時間を費やすことができると考えられる。 以上より、研究計画に一部の変更があったもののおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究がおおむね順調に進展していることから、今後も当初の研究計画通りに研究を推進する。 サケラート環境センター(タイ)において現地調査を実施するとともに、本年度現地調査を実施できなかったグヌンハリムン国立公園においても調査を行う。これまでのデータと合わせて解析を進め、得られた結果をまとめて東南アジアにおける種多様性を明らかにするとともに、人為撹乱がそれらに与えるインパクトを評価する。以上の内容について、論文を執筆し国際学術誌へ投稿し、学会発表も行う。
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Research Products
(4 results)