2014 Fiscal Year Annual Research Report
ホスト社会における移民集団の適応・同化に関する地理学的研究
Project/Area Number |
14J01668
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 昂輝 日本大学, 文理学部, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | トロント / ポルトガル人 / 移民 / エスニック集団 / 社会関係 / ジェントリフィケーション / エスニックフェスティバル / 選挙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、トロントにおいて2度のフィールドワーク(6月・10月)を遂行した。6月にはリトルポルトガルにおいて、ポルトガル系団体によって催されるエスニックフェスティバルと近年流入するジェントリファイアーを中心に開催されるストリートフェスティバルをそれぞれ調査し、トロントのインナーシティの変容過程、およびエスニック社会においてエスニックフェスティバルが有する意義と役割を検討した。他方、10月の調査ではリトルポルトガルを含む選挙区を対象とし、トロント市議会議員選挙において、ポルトガル系現職議員を取り巻く選挙戦に焦点を当てた。リトルポルトガルとその周辺では、(1)ホスト社会への同化に伴うポルトガル系住民の自発的な居住分散と、(2)ジェントリフィケーションの進展という集団内外の両方の要因によって、ポルトガル系住民とジェントリファイアーの混在化が進展している。調査の結果、ポルトガル系議員は同胞意識が最も高揚するエスニックフェスティバルにおいて、同胞住民の支持を呼びかけるとともに、その他のイベントにも参加し、集団外部住民の取り込みも企図していることが明らかになった。ポルトガル系の現職議員は、ポルトガル系社会の支持を基盤としつつも、近年流入する非ポルトガル系住民の支持も獲得することにより、地域変容期にあたる2014年の選挙戦にも勝利した。以上をはじめとした調査成果は、日本地理学会を含む5つの学術大会等で発表した。 論文に関しては、ポルトガル系移民社会の空間構造に着目した研究を英文でまとめ、学術雑誌Geographical Review of Japan Series Bに投稿した。また、リトルポルトガルのポルトガル系・非ポルトガル系経営者の社会関係を明らかにするため、ソシオグラムを用いた分析をおこなった。この研究も英語での執筆を終え、国際学術雑誌へ投稿する準備を完了した。論文の投稿先を選定し、近日中に投稿予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の最終目的であった、ソシオグラムを用いた経営者の社会関係分析を初年度に完了したことは、本年度における最大の達成であった。本研究は既に次なる発展段階に移行しており、ホスト社会における移民エスニック集団の政治参画などについても検討するに到っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、トロントのポルトガル系移民とその社会空間を彼らにとっての着地であるトロントにおいて考察した。研究の2年目となる次年度は、4~5月にポルトガルでのフィールドワークを実施し、発地の視点からポルトガル系移民を把捉する。なかでも、トロントに多くの移住者を送出したアゾレス諸島における調査に注力する。また、夏季にはトロントにおいてフィールドワークをおこなう。ポルトガル系移民社会内部における参与観察を主体としつつも、ホスト社会としてのトロントの都市構造の変容にも着目する。発地・着地の両方の視点から、トロントのポルトガル系移民社会、およびリトルポルトガルを捉えることにより、さらなる研究の発展が予見される。なお、調査によって得られた研究成果は、学会および学術雑誌において逐一発表する。直近の学会発表は、8月においてロシア・モスクワで開催される、International Geographical Union Regional Conference を予定している。
|
Research Products
(5 results)