2014 Fiscal Year Annual Research Report
分光学的手法を用いた鉄系超伝導体における超伝導メカニズムの解明
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14J01722
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小林 達也 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では、鉄系超伝導体に見られる電子ネマティック相の起源を明らかにすることを目的の一つとしてあげた。それと密接に関係する異方的面内電気抵抗率の振る舞いを輸送測定、光学測定の面から明らかにすることを目指した。鉄系超伝導体の常磁性・反強磁性相では、スピン、軌道、格子の異方性から予想できない面内電気抵抗率の異方性が観測されている。この起源として、「異方的不純物散乱」と「電子・ホールドープによるフェルミ面の形状変化」という2つの説が実験・理論の両面から提案されてきた。 そこで本年度の研究では、BaFe2As2のFeサイトにCr, Mn(ホールドープ)及びCo(電子ドープ)置換を行い、面内電気抵抗率の異方性を調べた。 その結果、Mnを置換した系では、Co置換系と同じく反強磁性斜方晶相のb軸方向の抵抗率が、a軸方向の抵抗率よりも大きいことが分かった。一方で、Cr置換系では、置換量の増加とともに異方性が逆転することが明らかになった。 また、常磁性相に見られる抵抗率の異方性も、Mn, Co系とCr系で対称的になっていることがわかった。CrとMn置換系の違いを明らかにするためホール係数の測定を行ったところ、Cr系ではホール係数の符号が、置換とともに負から正に変化する一方で、Mn系では負のままであった。これらは、Cr系では置換によりホールキャリアが増加するが、Mn系はホールドープになっていないことを示している。これらから、鉄系超伝導体の常磁性・反強磁性相にみられる電気抵抗率の異方性は「電子・ホールドープによるフェルミ面の形状変化」を反映したものであることが明らかになった。これは、鉄系超伝導体の常伝導輸送現象を記述するモデルに強い制限を与えるものである。現在、これらの物質の非双晶状態での光学伝導度を明らかにするため、装置作成と赤外分光測定をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
鉄系超伝導体の常磁性・反強磁性相にみられる電気抵抗率の異方性は「電子・ホールドープによるフェルミ面の形状変化」を反映したものであることが明らかにした点では進展があった。しかし、当初の目標である赤外分光測定への取り組みが遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、これらの物質の非双晶状態での光学伝導度を明らかにするため、装置作成と赤外分光測定をおこなっている。
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Research Products
(4 results)