2015 Fiscal Year Annual Research Report
バイオインスパイアード反応を利用する生物活性アルカロイドの全合成研究
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14J01780
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
只野 慎治 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | バイオインスパイアード反応 / 水中反応 / アルカロイド / 網羅的全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然より見出されたトリプトファン由来二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類の網羅的合成研究を行った。これまでの研究で二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類の合成手法を確立していたものの、ワンポット反応へと展開した場合において収率の低下が問題となった。そこで今回はこの問題点を改善するべく詳細な反応条件の検討を行った。具体的には鍵二量化中間体の脱水縮合反応とジケトピペラジン環形成反応時の当量検討および反応温度の検討である。種々条件検討の結果、脱水縮合反応時に使用する縮合剤および縮合するアミノ酸の当量を小過剰量の場合においても高収率で反応が進行することを明らかとし、ワンポット反応時の収率の低下の原因となる求核性分子を最小限に抑えることに成功した。また、ジケトピペラジン環形成反応の検討では保護基の脱保護を伴うため230度以上と高温反応を必要とし、異性化反応により収率が低下する。そこで、温和な条件下で脱保護可能な保護基に変更し反応条件の検討を行った。詳細な条件検討の結果、室温条件と非常に温和な条件下、保護基の脱保護およびジケトピペラジン環形成反応を進行させることに成功し、また、この際懸念された異性化反応は全く観測されなかった。これらの最適化した反応条件を用いてワンポット反応へと展開した。その結果、高収率で鍵二量化中間体から天然物への誘導に成功した。これにより簡便かつ網羅的な二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類の合成手法を見出した。以上得られた結果と共同研究により明らかとなった生物活性の結果をまとめ、論文発表および学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に沿った合成研究を展開しており、昨年度はトリプトファン由来二量体型ジケトピペラジンアルカロイド類の網羅的合成研究を行った。これまでの手法では一部の基質において収率および使用するフラスコの数(ポット数)は満足いくものではなかった。そこで、試薬の当量比および詳細な反応条件等の検討を徹底的に行った。その結果、天然物およびそれら誘導体を鍵中間体から高収率かつワンポットにて合成可能な手法を見出した。また、本手法を用いてこれまで立体化学が未決定であった天然物2種類の相対立体配置を明らかとし、天然物11種類、それら誘導体7種の計18種類の化合物の網羅的な全合成を達成し、申請者が提案するバイオインスパイアード反応の有用性を実証した。得られた研究結果をまとめ、論文発表および学会発表を行った。また、昨年度は ピロリジノインドリン骨格を有する化合物の転位反応の検討を行った。3位に芳香環を有するピロリジノインドリン化合物を酸性条件に伏したところ、芳香環がインドールの2位に転位した生成物が得られることを見出した。本結果は生合成で行なわれている天然物の骨格変換反応を理解する上で非常に参考になる。また、本研究課題の一つであるインドールプレニル転位反応の根幹をなすものであり、本研究を成功させる上で大きな知見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、昨年度見出した3位に芳香環を有するピロリジノインドリン化合物の転位反応の詳細な検討を行う。具体的には反応溶媒や反応温度、添加する酸の検討および3位の芳香環に様々な置換基を導入し、基質一般性の検討を行う。得られるこれらの結果を考慮し、転位反応の反応機構の推定および提案を行う。また、本検討結果をインドールプレニル転位反応に応用し、申請者が独自に提案する生合成仮説(生体内プレニル転位反応)をフラスコ内で再現する。その後、対応するアミノ酸との脱水縮合、ジケトピペラジン環形成を行いプレニル化アルカロイドの効率的な合成手法の開発を行う。得られる中間体や天然物は共同研究により生物活性試験を行い、構造活性相関研究へと展開する。また、本研究で明らかとなる転位反応はプレニル化アルカロイドのみならず、自然界の天然物の生合成で普遍的に行われていることが予想される。そこで、本転位反応の知見を活かし、未だ生合成機構が明らかとなっていない天然物の生合成機構の解明に取り組む。また、現在多量体型ピロリジノインドリンアルカロイドの合成研究も行っている。縮合部位の位置選択性は改善の余地があるものの、すでにモデル基質を用いて二量化反応の開発に成功している。そこで任意の置換基を導入することで天然物と同様な縮合様式を構築し、この反応を繰り返し行うことで多量体型ピロリジノインドリンアルカロイドの簡便かつ網羅的な全合成を行う。
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Research Products
(2 results)