2014 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体を触媒とする制御カチオン重合系の開発と応用
Project/Area Number |
14J01875
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧井 浩一郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | カチオン重合 / ビニル重合 / 遷移金属錯体触媒 / ビニルエーテル / 制御重合 / ルテニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではカチオン重合のルイス酸触媒としてほとんど検討例のなかった遷移金属錯体に焦点をあて、遷移金属触媒特有の制御カチオン重合系の構築を目指している。平成26年度は、ルイス酸性が期待され、種々の触媒能をもつルテニウム錯体を用いて、ビニルエーテル類(VEs)の制御カチオン重合開始剤系の構築およびその応用に取り組んだ。 ルテニウム触媒を用いた制御カチオン重合系の構築:種々のルテニウム触媒によるイソブチルVEのカチオン重合を検討した結果、カチオン性錯体であるCp*Ru(MeCN)3PF6をルイス酸触媒に用いることで、モノマーが迅速かつ定量的に消費され、ポリマーを与えることがわかった。この触媒系にごく少量の四級アンモニウムハライドもしくはかさ高いピリジン誘導体を添加することで、モノマー消費速度を抑えることができ、制御重合が進行することがわかった。添加剤の添加量を詳細に検討したところ、触媒と添加剤との量論比が重合を制御する鍵であることがわかった。すなわち、四級アンモニウム塩ではルテニウム触媒の0.5~1.0等量、ピリジン誘導体では1等量以上それぞれ用いることで重合を制御できた。また、ホスフィンやビピリジンなどの有機配位子を添加した場合でも、無添加系に比べてモノマー消費速度を抑えられることがわかった。特に先のカチオン性Cp*Ru錯体とトリフェニルホスフィン配位子を組み合わせた触媒系において、イソプロピルVEをモノマーに用いると、制御重合が進行することがわかった。 カチオンおよび制御ラジカル同時重合:カチオン性Cp*Ru触媒、ホスフィン配位子及びラジカル重合開始剤であるα-ハロエステル誘導体の存在下で、ビニルエーテルのカチオン重合とメタクリレートの制御ラジカル重合が同時に進行する系を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた系とは異なるものの、新たに別の錯体を触媒に用いてビニルエーテル類の制御カチオン重合系を構築することができた。また次年度以降に予定していた遷移金属触媒の特色を生かした高分子合成、反応系の探索も行った。この結果、①温和な条件下でのカチオン・ラジカル同時重合、②ニトリルや二級アミドなど、これまでの典型金属塩化物を用いたカチオン重合では併存させることが難しかった、極性添加剤存在下でのビニルエーテルの重合など、新規高分子合成につながる可能性のある興味深い系も見出しつつあり、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究からカチオン性Cp*Ru錯体がビニルエーテルのカチオン重合の触媒となることがわかった。この錯体は様々な触媒反応において使用例があるので、平成27年度はこの錯体を中心に、単一のルテニウム触媒を用いた①カチオン重合とその他の重合反応を利用した新規ポリマー合成②カチオン重合-ポリマー修飾系の開発、を目標に研究を行う。
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Research Products
(3 results)