2014 Fiscal Year Annual Research Report
自然現象を記述する偏微分方程式の解の漸近挙動に関する研究
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14J01884
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 正弘 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / 解の爆発 / ライフスパンの評価 / 非線形消散型クライン・ゴルドン方程式 / 臨界指数 / 局所解の非存在 / 絶対値冪乗 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は, 小川氏と共同で, 藤田臨界における絶対値p乗の非線形項を持つ消散型波動方程式の解の爆発時刻の評価を研究した. その上からの評価は, 空間4次元以上の場合, 未解決であったが, その導出に成功した. さらに, この結果を, 変数係数の場合に拡張している. また, 定数係数の場合には, 最適な下からの評価も導出した. これらの結果は,現在国際紙に投稿中である. 次に, 私は, 戌亥氏と共同で, 絶対値p乗の非線形項を持つシュレディンガー方程式(NLS)とクライン・ゴルドン方程式(NLKG)の解の非存在に関する研究を行った. このNLSに対して, 1<p<1+4/dの場合に, 小さな初期値に対する解の爆発の結果を示した.また,爆発時刻のほぼ最適な評価を導出した. これらの結果は, 国際紙J. Evol. Equs.に採録が決定している. さらに, p=1+4/dの場合に, 大きな初期値に対する解の爆発, 及びp>1+4/dの場合に,小さな初期値に対する局所解の非存在を示した. これらの結果は, 国際紙J. Math. Anal.Appl.に採録された. さらに同種の非線形項を持つエネルギー臨界冪1+4/(d-2)の場合のNLKGに対して, 大きな初期値に対する解の爆発, エネルギー超臨界p>1+4/(d-2)冪の場合のNLKGの小さな初期値に対する局所解の非存在を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
藤田臨界の絶対値p乗の非線形項を持つ消散型波動方程式の解の爆発時刻の評価は, 空間4次元以上の場合, 長い間未解決であった. その導出に成功したことは, 本研究分野の発展に大きく貢献したと言える. また、絶対値p乗の非線形項を持つシュレディンガー方程式に対して, p=1+4/dのとき, 初期値が大きい場合に, 局所解が大域的に延長できるのかと, p>1+4/dの場合に, 局所解が存在するのかが未解決であった. これらの問題に対して, ある否定的な結果を示すことできた. また, これらの結果は, 国際紙J. Math. Anal.Appl.に採録された. さらに, 同種の非線形項を持つエネルギー臨界冪1+4/(d-2)の場合のNLKGに対して, 大きな初期値に対する解の爆発, エネルギー超臨界p>1+4/(d-2)冪の場合のNLKGの小さな初期値に対する局所解の非存在を示した. これらの結果は, テスト関数の方法が質量項を持つNLKGに対しても状況によっては有効であったことを示している. これらの結果は, 現在国際紙に投稿中である. 以上3つの研究成果から考えて, 本研究目的達成は「おおむね順調に進展している」と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで, 絶対値p乗の非線形項を持つシュレディンガー方程式に対して, 解の非存在に関するいくつかの結果を示した. そのうちの1つに, 1<p<p_{S}の場合の小さな初期値に対する解の爆発の結果がある. このp_{S}は, ストラウス冪と呼ばれ, 非線形波動方程式(NLW)の分野では, 「大域解の存在と爆発とを分ける閾値であろう(Strauss予想)」と1980年以後盛んに研究され, 2006年に解決された. NLWでは, p_{S}は爆発領域に入るが, NLSに対するp_{S}の役割は不明である. また, 爆発解の発散速度の評価が全くの未解決である. そこで, 今後は, これらの2点を明らかにする. また, 同種の非線形項を持つ消散型波動方程式において1<p≦1+2/d (d:空間次元)の場合に, 解の爆発時刻の評価を導出した. その評価は, 初期値の大きさで上と下から評価している. p<1+2/dの場合には, 上と下からほぼ同様のオーダーで初期値により評価できたが, p=1+2/d (藤田指数)の場合には, 上からと下からの評価のオーダーに若干のズレがある. 今後は, このズレをなくす研究を行う.
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Research Products
(8 results)