2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能計測のフィードバックを用いた視聴覚統合と記憶検索のメカニズム解明とその応用
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14J01927
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯淺 健一 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 脳機能計測 / 視聴覚情報 / 脳波 / 定常状態視覚誘発電位 / アルファ波 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的はモダリティに依らない認知機構の解明であり、視覚情報と聴覚情報が認知過程に於いて統合される機序に主題をおいて研究を進めた。視聴覚情報が統合されるには各刺激の空間、時間情報が一定以上の精度で一致している必要が有り、刺激の空間定位、刺激タイミングの情報統合に関して多くの研究が為されてきた。本年度は現在も議論が続けられている刺激時間の知覚に関して、視覚、聴覚モダリティ間での特性の研究を進めた。 ミリ秒から数秒程度の時間知覚に於いては、知覚される主観的時間は外部刺激の特徴により歪められることが知られており、時間知覚の機序を調べる上でしばしば利用される。10.9Hzで変調する刺激を用い、視覚刺激、聴覚刺激、視聴覚同時刺激を行った際の知覚時間の変化を直接比較した結果、視覚フリッカでは知覚時間の延長、聴覚フリッカでは知覚時間の縮小と逆の効果が観察された。この現象はこれまで発見されていなかった一方で、刺激の時間周波数が知覚時間歪みに及ぼす影響が感覚モダリティ間で異なることを示唆しており、視覚と聴覚では時間分解能が異なるとするこれまでの知見に則している。 また視聴覚の同時刺激では知覚時間の歪みは観察されず、視聴覚の効果が相殺されたと解釈できた。刺激タイミングの研究では聴覚優位の情報統合が報告されており、視聴覚の情報が異なる場合は視知覚が聴覚刺激に合わせて歪められる。本研究結果は持続時間知覚の視聴覚統合に関して、刺激タイミングの知覚とは異なる機序が働いていることを示唆している。このときの神経活動を脳波計(EEG)を用いて計測したところ、頭頂の電極において視覚フリッカ、聴覚フラッタ同時呈示時に特異的なアルファ帯域の活動が観察された。このアルファ帯域の神経活動は刺激の知覚時間に応じて変動しており、視聴覚統合後の持続時間の神経表象に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同じ周波数の視覚フリッカ、聴覚フラッタが逆の時間知覚歪みを引き起こすことを発見したことで、持続時間は各感覚モダリティ特異的に符号化されているとする仮説を強く支持することができた。また視聴覚の同時刺激で時間歪みの効果が相殺されること、その時の知覚時間を反映した神経活動を脳波計測で発見したことから、視聴覚統合後の持続時間情報を反映した神経活動の存在が示唆された。このアルファ帯域の脳波の発見は、今後時間情報の視聴覚統合の研究を進める上で、重要な足がかりとなる事が期待される。 これらの研究成果に関して、行動実験の結果は既に原著論文の執筆が完了し、投稿段階にある。また脳波実験の結果は現在原著論文の執筆中であり、順調に研究を遂行できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
頭頂のアルファ帯域の神経活動に視聴覚統合された時間情報が反映されていることが示唆されたため、今後はこの神経活動に関して追加の研究を予定している。視覚、聴覚刺激をずらして呈示することで視聴覚統合の度合いを変化させ、その時の知覚時間の変化、及び頭頂のアルファ帯域の神経活動を観察することで、時間情報の統合に関して知見を深める。またEEG計測と同時にfMRI計測を行うことで、EEGでは解析の難しい関連脳領域の検討を行う。
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