2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダリア花色の多様性を生み出すエピジェネティクスの解明
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14J01993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
出口 亜由美 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 転写後遺伝子サイレンシング / サイレンシングサプレッサー / 花色 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダリアに感染するタバコ条斑ウイルス(TSV)は黒色系品種‘黒蝶’の花弁で生じるフラボン合成酵素遺伝子(DvFNS)の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を抑制し、色素蓄積量の変化および花色の赤紫色化を誘導することが示唆されていた。本研究では、TSVのPTGS抑制能の証明を行うとともに、それを利用してダリアの花色に関与するエピジェネティック制御の機構解明を行うことを目的としている。本年度は以下の2つの調査を実施し、結果を得た。 (1)DvFNSのPTGS抑制能の証明:黒色系4品種にTSVを接種し、花色、色素蓄積量、遺伝子発現量、およびsiRNA発現の変化を調査した。すべての品種でTSVがDvFNSのPTGSを抑制したことが示された。また、それとともに、DvFNSのPTGSが黒色という花色の形成に重要であることが示された。 (2)DvCHSのPTGS抑制能に関する調査:ダリア複色系品種の花弁純白部はカルコン合成酵素遺伝子(DvCHS)のPTGSにより形成される。TSVのDvCHSに対するPTGS抑制能を調査するために、赤白複色系1品種および黒白複色系2品種へのTSVの接種を行った。黒白複色系品種ではDvCHSとDvFNS両遺伝子のPTGSがTSVにより抑制され、完全な赤紫単色花になった。よって、TSVはDvFNSだけでなくDvCHSのPTGSも抑制する能力を有することが示唆された。しかしながら、赤白複色系として用いた品種ではTSVによりDvCHSのPTGSがほとんど抑制されなかったことから、黒白複色系2品種とはPTGSの制御が異なる、あるいはTSVに対する抵抗性を有する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、これまでに報告のないTSVのPTGS抑制能を証明することができた。また、黒色という花色形成に関するPTGSを介した制御機構についての新知見も明らかにした。これらの結果に関して、学会発表なども順調に行えているためこのように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
TSVのPTGS抑制能を利用し、特徴的な花色を有する様々な品種に接種することで、ダリアの花色に関与する新規PTGSの探索を行う。また、赤白複色系品種でDvCHSのPTGSが抑制されないことが制御機構の違いによるものであるのか抵抗性などによるものであるのかを明らかにするために、PTGSを制御するゲノム配列の特定やウイルス発現量の調査を予定している。
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