2015 Fiscal Year Annual Research Report
メラネシアの人間-サンゴ礁関係の人類学的研究:ソロモン諸島の海上居住民を事例に
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14J02197
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
里見 龍樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ソロモン諸島 / マライタ島 / ラウ / 海上居住 / サンゴ礁 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
予定していた現地調査は2016年度に延期し、2015年度は、これまでの調査データの検討と研究成果の発表に専念した。特別研究員としての研究課題は、ソロモン諸島マライタ島で「海の民」(アシ)と呼ばれる人々が営んできた独特な海上居住を、サンゴ礁という自然環境との関わりにおいて理解しようとするものである。2015年度には、この方針に従い、サンゴ礁という自然景観と、その中にアシの人々が築いてきた「人工島」という人為的景観との組み合わせが、キリスト教受容などの歴史的変化を経た今日のアシにおいてどのように認識・体験されているかを考察する論文を執筆した。同論文は、2016年3月、河合洋尚(編)『景観人類学――身体・政治・マテリアリティ』(時潮社)の第4章「『問題』としての景観――ソロモン諸島マライタ島のアシ(海の民)の事例から」として刊行された。また、2015年度には、これまでの研究成果をまとめた博士論文の改稿を進め、著書『「海に住まうこと」の民族誌――ソロモン諸島マライタ島北部における社会的動態と自然環境』(風響社、近刊)として刊行決定に至らせた。 また2015年4月より、国立民族学博物館の共同研究会「エージェンシーの定立と作用――コミュニケーションから構想する次世代人類学の展望」(代表者:杉島敬志)に参加し、この研究会の枠内でも研究成果を発表してきた。2016年1月に開催された同研究会のワークショップでは、「『海に住まうこと』のヘテロノミー:ソロモン諸島マライタ島の『海の民』におけるエージェンシーの境界」と題し、マライタ島のアシにおけるサンゴ礁認識を事例に、現代の文化人類学理論において支配的なネットワーク論的モデルでは把握できない環境認識や実践がありうることを論じた。このような理論的考察は、2016年度もさらに彫琢されるとともに、追加の現地調査を通じて精緻化されるべきものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた現地調査は延期となっているが、この点については、すでに2013年度に行った現地調査によって豊富なデータが得られているという事情があり、研究成果の発表に支障は生じていない。2015年度を通じ、論文の執筆・投稿や研究会での報告など、研究成果の発表に着実に取り組んでおり、研究はおおむね順調に進展している。また、博士論文を改稿し著書としての刊行を決めたことも、2015年度における大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで延期されていたソロモン諸島マライタ島での現地調査を2016年度中に実施し、これまでの研究内容を補う新たな調査データを収集することを計画している。具体的には、調査地の人々におけるサンゴ礁関連の民俗生態学や環境変動に関する認識を主な調査項目として予定している。また2016年度には、これまでの研究成果を著書として出版することが決定しているほか、2016年7月にイギリスで開催される国際学会Association for Social Anthropologyでも研究成果を発表することが決まっている。
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Research Products
(2 results)