2014 Fiscal Year Annual Research Report
結晶性Mo-V-O複合酸化物の触媒構造設計による低級アルカン選択酸化触媒活性制御
Project/Area Number |
14J02310
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 理史 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 選択酸化 / 結晶性複合酸化物 / ミクロ細孔 / 酸化還元処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶性Mo3VOx複合酸化物触媒(MoVO)は低級アルカンの選択酸化反応に非常に活性の高い触媒であり、特に、エタン酸化的脱水素反応については世界最高活性を達成している。この触媒は結晶構造中の7員環ミクロ細孔(直径0.40 nm)にエタンを取り込み活性化するため、ミクロ細孔全体が反応に関与することが我々の研究で明らかになっている。そのため、ミクロ細孔の制御がエタン選択酸化触媒能に強く関与していることが予想される。MoVOは酸化還元により7員環ミクロ細孔径が制御可能であることを我々は以前に報告した。今回、MoVOに酸化還元処理を行うことで、触媒の構造、ミクロ細孔性質、およびエタン酸化触媒反応活性能の関連を検討した。 MoVOは還元処理を行うことで、5つの金属酸素八面体で構成されるペンタマーユニット中の、7員環に面した金属-酸素-金属結合の酸素が優先的に脱離し、しかもこれは再酸化で元に戻らないことを明らかにした。この酸素が脱離することでエタン選択酸化触媒能は3倍以上に増大した。一方、還元が過度に進行すると、7員環を取り囲む5つのMoで構成される五員環ユニットが膨張して7員環を圧迫することが分かった。これにより、エタンの細孔内へのアクセスが制限され、触媒活性能は著しく減少した。酸化還元によるMoVOの7員環近傍の局所的な構造変化がエタン選択酸化触媒反応に大きく影響する様子が見て取れた。本研究により、エタン選択酸化触媒反応の分子レベルでの理解が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、結晶性Mo3VOx複合酸化物触媒(MoVO)の酸化還元による局所的な構造変化と、構造中の特定の酸素が触媒活性に大きく作用することを明らかにできた。これにより、MoVOの局所的な触媒構造と触媒活性の強い相関が見て取れた。この成果は本研究課題の「結晶性Mo-V-O複合酸化物の触媒構造設計による低級アルカン選択酸化触媒活性制御」について、触媒構造の制御すべき箇所を特定できたことを意味し、本課題を大きく進展させることができたと考える。 また、本年はMoVO触媒構造を変えることなく、第三金属を構造内に含む触媒群を合成することができた。この触媒群と第三金属を含まないMoVOの触媒反応活性を比較することで、触媒反応における第三金属の役割を明らかにできた。また、これにより、触媒能を制御することができた。触媒構造中に、局所的に異金属を添加することで触媒活性能を制御できたことは、本研究課題の大きな前進であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
エタン選択酸化反応における、結晶性Mo3VOx複合酸化物触媒(MoVO)の活性酸素種の同定、およびミクロ細孔と同定した酸素種が有効である新たな反応の開拓を行う。 さらに、幅広い種類の第三金属を触媒構造内に添加することで、触媒反応への第三金属の添加効果を明らかにし、新たな反応への展開も行う。
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Research Products
(4 results)