Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に, 重みつき非線型項をもつ波動方程式を考察した. これは, ある半線型消散型波動方程式と関連があるもので, 時間変数に関して減衰するような消散項をもつ, 1次元半線型波動方程式である. 特に減衰率が, 解が熱方程式のそれか, 波動方程式のそれかに振る舞う臨界的な状態である場合を扱った. この場合消散項の係数が, 解が熱的か波動的かを決定することが, Wirth (2004) によって示されている. 本研究では, 解の挙動が熱的な場合を扱った. 先行研究では, 半線型熱方程式の臨界指数(3次の非線型性)を境に解が時間大域的に存在するか, そうでないかが明らかにされていた. 時間大域解の存在については, D'Abbicco (2015), 時間大域解の非存在については, Wakasugi (2014) によって得られた. 特に, 時間大域解の非存在については, 解の最大存在時刻の上からの評価が, 非線型性が劣臨界の場合に得られていた. 本研究では, 非線型性が臨界の場合についても, 解の最大存在時刻の最適な評価を得ることを目的とし, 初期値がある種の対称性(奇関数)を仮定する場合に, 解の挙動がどのように変化するのかということを観察した. 結果としては, 昨年度の研究内容であった, 空間変数の重みつき非線型項をもつ1次元波動方程式で得られた解析手法を用いることによって, 非線型性が臨界の場合についても解の最大存在時刻を得るに至った. 更に, 初期値を奇関数と仮定する場合には, 解の時間大域解の存在と非存在を分ける臨界指数が, 3次元空間における半線型波動方程式の臨界指数と同様であることを見出した. これは, 解の特性方向の減衰評価が, 3次元半線型波動方程式のそれと同様なものであることが要因となっている.
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