2014 Fiscal Year Annual Research Report
トマトの野生種が有する高糖度遺伝子の単離と高糖度化機構の解明
Project/Area Number |
14J02336
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 裕樹 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 野菜 / トマト / 果実 / 糖度 / 量的形質 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
トマトは世界で最も生産量の多い野菜で、近年では果実作物のモデルとして研究が進んでいる。トマトをはじめとする多くの果菜や果樹における重要な品質決定要因として、果実中に含まれる糖が挙げられる。しかし果実の糖度は量的形質であることから、果実を高糖度化する遺伝子の単離やメカニズムの解明は容易ではない。トマトの第8染色体には、果実の糖度に影響する量的形質遺伝子座が存在し、栽培種S.lycopersicum cv. M82の第8染色体の一部を、野生種S.pennelliiの染色体に置換した染色体断片置換系統IL8-3は、M82に比べて果実が高糖度化する。そこで本研究は、S.pennelliiが有する高糖度遺伝子の単離と、IL8-3の果実が高糖度となる機構の解明を目的に進めた。
これまでの研究で、IL8-3の高糖度化の要因が果実発育初期におけるデンプンの蓄積と、それに伴うヘキソースの増加であることが明らかとなっている。またS.pennelliiの高糖度遺伝子は第8染色体の約100kbpの領域に存在し、同領域には11遺伝子が存在することも分かっている。対象となる11遺伝子について、M82とIL8-3でcDNAの塩基配列の比較を行ったところ、6遺伝子のオープンリーディングフレームにアミノ酸配列の違いが確認された。これら6遺伝子の発現解析をリアルタイムPCRで行ったところ、いくつかの遺伝子において発現量の差がみられた。さらにトランスクリプトーム解析で果実の発育に伴うM82とIL8-3の遺伝子発現の違いを調べたところ、細胞壁インベルターゼ遺伝子やスクロース合成酵素遺伝子などの糖およびデンプンの代謝に関わる遺伝子の発現が、M82とIL8-3で異なっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、本研究の目的であるトマトの第8染色体に座乗している高糖度に関わる遺伝子の単離、およびトマトの染色体断片置換系統の1つであるIL8-3の果実が栽培種M82に比べて高糖度化する生理機構を明らかにすることを目的に、これまでの研究で見出した高糖度化に関わる候補遺伝子の解析、およびトランスクリプトーム解析を行った。その結果、候補遺伝子を6遺伝子にまで絞り込むとともに、細胞壁インベルターゼ遺伝子やスクロース合成酵素遺伝子といった、糖代謝に重要な遺伝子の発現がM82とIL8-3で異なることを明らかにするなど、研究の完成に向けて一定の成果が得られた。よって、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究では、トマトの高糖度化に寄与すると考えられる6遺伝子を有力な候補遺伝子として見出すとともに、それぞれの遺伝子がタンパク質としての機能に影響してIL8-3 の高糖度化に寄与している可能性を示した。公開されているデータベースによると、これらの候補遺伝子は過去に糖代謝との関係が明らかにされていないことから、2015年度はS.pennellii由来の候補遺伝子を形質転換により栽培種に導入し、糖度の上昇を確認するとともに、トランスクリプトーム解析で見出された細胞壁インベルターゼ遺伝子やスクロース合成酵素遺伝子の発現などとの関係を明らかにする。またIL8-3は機能性成分やアミノ酸など、糖以外の果実品質の向上に関わる重要な代謝物についても多く含まれている可能性があるため、メタボローム解析を行って果実の高品質化に寄与する物質の代謝変動についても解析する予定である。
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Research Products
(8 results)